第156話 遊び
ビアンキに海の向こうまで行く事を提案されたが、せっかく別荘も建てたので、ゆっくり過ごしてから行ってみようという事になった。
この世界では海で遊ぶという常識が無いので、ムツキの少ない知識と欲望で、海で遊ぶ準備を作った。
「む、ムツキ様、これでよろしいのですか?」
「これは、ムツキ様の言う通り御者さんに暇を出して出して良かったですね」
「ムツキ、どうだ? 似合ってるか?」
ムツキは別荘の中で水着に着替えた3人の妻を見て、見惚れてしまった。
貴族には肌をさらす習慣はない。
というよりも、傭兵の女性であってもアニメの様にミニスカートの人物はおらず、ズボンを履いており、森に入ったりする事も多い為基本長袖である。
妻達と夜の生活もある為、裸は見ているが、水着姿と言うのはまた違った魅力がある。
こういう時に、慣れている人ならサラッと褒めるのだろうが、ムツキはそんな余裕は無く、惚けたようにずっと見惚れていた。
「ムツキ、どうだ? 似合ってるのか?」
惚けているムツキに、アインが念押しするようにもう一度質問した。
「ごめん。みんなが綺麗過ぎて、見惚れてしまってたんですよ」
「そうか! ふふん、綺麗な妻を持って嬉しいだろう」
ムツキの返事を聞いたアインは、自慢げに腕を組んで胸を張った。
いつもはサラシで締め付けている大きな胸が、ホルダーネックで強調され、更に腕の上に乗っかってプルンと揺れた。
「うう、アインさんはずるいです。そんな武器を持って……」
シャーリーが自分の慎ましい胸に目をやり、アインとエレノアの胸をみた。
「シャーリーさん、ムツキ様はそこだけを見ている訳ではございませんわ。初めての夜にその引き締まって薄く線の入ったお腹を褒められたと惚気ていたではありませんか。私はどれだけ運動してもシャーリーさんの様な綺麗なウエストにならずに少し摘めてしまいますわ」
エレノアはシャーリーの惚気を暴露しながら自分のお腹を摘んだ。
騎士であったシャーリーが凄いだけでエレノアもスタイルがいいので、今つまんでいる様子をムツキと一緒に召喚された女子高生に聞かれれば血の涙を流して怒りそうだが、今は置いておこう。
シャーリーが、心配そうにムツキの方をチラチラと見ているので、ムツキは笑顔でシャーリーを褒めた。
シャーリーの為に作ったスポーティな水着がよく似合っていると思う。
アインとシャーリーがムツキに褒められて顔を緩める中、次は私の番ですよねとエレノアが期待の眼差しでムツキを見ている。
こう言ったボキャブラリーの少ないムツキだが、妻達を褒める言葉はスルスルと出てくる。
褒められたエレノアは、面と向かって言われると思った以上に嬉しかったのか、両頬に手を当てて体をくねくねとくねらせた。
全員の水着姿を褒め終わった後は、これまたムツキが作ったピーチボールで遊ぶ事にする。
ちなみにメルリスはムツキの妻では無くエレノア達の世話係としてついてきているので、水着っは無く、炎天下の中メイド服である。
炎天下の中でも汗ひとつ流さずに涼しい顔をしているのは流石といえよう。
ムツキ達夫婦が砂浜で遊ぶ中、メルリスは冷たい飲み物などを用意している。
「メルリス、それが終わったらあなたも一緒に遊びましょう?」
「いえ、私はまだまだする事は探せばありますので」
エレノアが誘うが、メルリスは夫婦で仲睦まじく遊ぶ4人の邪魔をするのはいけないからと言って遠慮を口にする。
「せっかくだからメルリスも遊びましょう。海に来る機会なんてそうそうないんです。それに、メルリスだけ忙しそうにしてたらみんな気になって精一杯遊べないですよ」
「しかし、私はこの格好ですので……」
ムツキの誘いにも、メルリスはメイド服をカーテシーの様に摘んで遊べる様な格好ではない事をアピールした。
「それなら」
ムツキはエレノア達を集めて内緒話をした。
それを聞いたエレノア達は、イタズラな笑顔を浮かべると、ムツキから何かを受け取り、メルリスを有無を言わさずに引きずって別荘へ入っていく。
「え、ちょ、エレノア様? シャーリー様? アイン様⁉︎」
少し経って別荘のドアが開くと、少し丈の長いパーカー姿に着替えさせられたメルリスが恥ずかしそうに裾を引っ張って膝を隠そうとしていた。
パーカーの下は水着で、隠せば行けるだろうとの考えであったが、これはこれでありという男は多いだろう。
「ほら、これで一緒に遊べますわ!」
エレノアに手を引かれ、砂浜に連れて来られると、メルリスはもうヤケクソといった様子で転がっているピーチボールを拾いに行った。
「ムツキ様、私への言葉は必要ありません、さあ、遊びましょう!」
その後、ムツキ達5人は、日が沈み始めるまでムツキが考えつく色々な海の遊びでたのしむのであった。
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