第155話 別荘建築
海でのバカンス。
それはブラック企業のリモートワークで家に閉じこもりっきりであったムツキの夢の一つ。
ハワイやグアムなどのザ・海外ビーチを思い浮かべ、よくわからないカラフルな飲み物片手に青い海に砂浜でゆっくりとした時間を過ごす。
というのが漠然としたイメージであった。
しかし、ビアンキの縄張りのために人の手がついていなかった海は、碧と翠が無限に広がる綺麗な景色であったが、浜に全く手がつけられていないので寛ぐにしても何もなさすぎであった。
そこで、ムツキはビアンキに話を通して、ここに別荘を建てることにした。
一度家を作った事があるので、前回よりも早く作ることができるだろう。
エレノア達は待ってもらっている間、前回は日数がかかったので宿で待っていてもらったが、今回は旅をして来て野営スキルが上がっているので、バーベキューをしてもらっている。
ムツキの建築は錬金術を使うので埃も出ない為、近くでしてもらっても問題ない。
今日のバーベキューは日本式の焼肉ではなく、肉と野菜を串に刺して焼くタイプのバーベキューである。
エレノア達が楽しそうに串に刺して準備をしてくれていて、ムツキはバンヤンハイの外れに家を作った時に余った木材などを使ってチャチャっと家を作っていく。
こっちに来る前にネットのどこの国かは分からない半分海に浸かっているような家、床がガラスで海が見えているような作りの家。
向こうでは海に浸かっていない海に近い家でさえ塩害を気にしなければいけないが、こっちの世界でムツキの建築ならバフをかけて家を作るので水に浸かっていようと劣化を気にしなくてもいい。
見る見るうちにできていく別荘を、ビアンキが海から顔を出して惚けた顔をして見ていた。
「どうした?」
「ムツキは力だけではなくこんな事もできてしまうのだな。我が見た事がある家よりも立派だ」
「まあ、いろんなスキルが使えますからね」
ムツキの何でもない事のようにいう様子に、ビアンキは「ほう」と息を吐いた。
「ムツキ様、奥様達が食事の準備ができたとの事です」
「ああ。いい匂いがして来ているよ。すぐに行く」
御者が呼びに来てくれたので、エレノア達が用意してくれたバーベキューを食べに向かう。
「もう出来そうですわね」
「あれ? 出来たんじゃないのですか?」
「バーベキューじゃなくて別荘ですわ。まさかこんなに早いなんて」
エレノアが焼けたバーベキューの串を渡しながら、ムツキにそう言った。
「うん。今日の晩には泊まれるし、すごい仕掛けも用意してあるから楽しみにしてて」
「分かりましたわ」
その後、海を眺めながらバーベキューを楽しんでいると、シャーリーが疑問を口にした。
「この海の向こうはどうなっているのでしょう?」
「全く何も見えないが、何かあるのか?」
シャーリーの疑問に対してアインが質問をした。
「分からないから言ったのですよ。ムツキ様は知っていますか?」
シャーリーの質問に、ムツキは肉を咀嚼しながら顎に手を持っていき、考える。
地球ならばすぐに他の大陸があってと話すのだが、この世界はどうなっているかは分からない。
「海の向こうにはこことは違うでかい島があり、人とは違う種族が暮らしている」
「あ、やはりそうなのですか?」
「ぬ、ムツキは知っていたのか。博識でもあるのか。流石は我が主」
ビアンキは出過ぎた真似をしたと言った風に目を細めた。
「いえ、よく似た所を知っているだけです。ビアンキ、話してくれますか?」
ビアンキはムツキからの質問に嬉しそうに海の向こうの話をした。
海の向こうにはドラゴンの魔者である
「ムツキの実力なら問題ないだろう。行ってみるか?」
海の向こうの話をし終わったビアンキの提案に、ムツキ達は驚かされるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます