第154話 シードラゴン

兵士達が急いでくれたおかげで、翌朝には城との再確認もできて、バリケードを通ってムツキ達は海の方へと向かう事ができた。


「潮の香りがしますね」


バリケードを通ってしばらく進んでいると、砂浜が見えてきた。


窓を開けると、ムツキには懐かしい潮の香りが風にのって馬車まで届いた。


「塩の香りですか?」


「ふふ、塩とはちょっと違うんですが、私の世界では海の香りの事を潮の香りと言うんですよ」


「へえ、この匂いは海の香りなんですね」


エレノアの言葉に合わせてエレノアと一緒にシャーリーとアイン、メルリスは一斉に匂いを嗅いだ。


その様子を見てムツキはクスリと笑った。あまりにも4人の行動が一緒だったからだ。


「なんですか? ムツキ様?」


「いや、やんでもない。いや、皆んなの様子が余りにもかわいいと思ったからね」


ムツキの言葉に、エレノア達は顔を朱に染めた。


海を見るのが初めてなエレノア達に海の説明をしながら進んでいると、急に海が盛り上がり、ザブンと大きな音を立てて大きな生き物が姿を現した。


青い体に真珠のような虹色の鱗。風貌からドラゴンだと分かるが、ボロネ達とは体が違うムツキのイメージのなかではリヴァイアサンと呼ばれるドラゴンのような体の生き物が海から姿を現した。


「果てなき強さの人の子よ。我を殺しに参ったか?」


シードラゴンであろうドラゴンは、開口一番そう話した。

ムツキは馬車から降りるとシードラゴンと対峙する。


「私達は海に寛ぎにきたのですよ。新婚旅行と言って結婚した妻達と仲を深める為に遊びにきたんです。寛ぐ許可をもらえますか?」


ムツキが許可を求めた事に、シードラゴンは驚いた顔をした。


「昔の人はここを手に入れる為に我を殺しにきた。そんな事を言われたのは初めてだ」


「私は一応ボロネとペトレ、ナーラなんかの主をしているので無駄に争う気はないんですよ」


ムツキが笑いながら説明すると、リードラゴンは目を柔らかく細めた。


「懐かしい名前だ。奴らは元気か?」


「ええ。ボロネなんて初めて会った時には頭を擦り付けた状態でしてね」


ムツキは各ドラゴンと出会った時の話を懐かしそうに話した。


「なるほど。その強さに懐のデカさ、奴らが下に降るのも頷ける。ふむ、そうだな」


シードラゴンは海から少し乗り出し、砂浜に頭を付けるように屈んだ。


「我の名前はビアンキ。我が友らと同じく、強気人を主に迎え、従う事をここに誓う」


シードラゴン、ビアンキのいきなりの服従の誓いにムツキは驚いた。


しかし、もう4度目、バインミィや国王達を含めればそれ以上に行ってくれば慣れてもくる。


「分かりました。仲良くしてくれると嬉しいです」


「仲良くか。やはり、不思議な人だ」


ムツキは海に来ていきなり、シードラゴンを配下に加えたのであった。


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