第149話 騒ぎの原因

ムツキ達が街にたどり着くと、街の様子は騒がしかった。


兵士達が右往左往し、入門が制限されているようであった。


メルリスが、門のところまでどういった状況なのかを聞きに行って戻ってきた。


「どうやら、数日前に森の方でドラゴンの吐息のような大爆発が起こったせいで、国王が厳戒態勢を敷いたようですね」


メルリスの言葉を聞いて、エレノア、シャーリー、アインの3人の妻はムツキの顔を見た。


ムツキ本人も、苦笑いで頬をポリポリと掻いた。


この厳戒態勢、入門規制は、先日ムツキが盗賊を焼き払った事が原因だと予想できたからであった。


説明の必要もあるだろうし、メルリスにもう一度門番の所に行ってもらい、国王への挨拶の申し出をしてもらう。


その時に、シュナイゼルとアグニール連盟の書状も忘れない。


入門規制中であったが、ムツキ達は最優先で中へ入れてもらえる事になった。


馬車を門まで移動させていると、他の貴族の馬車から物言いがはいった。


「そこの馬車よ、私はゲール伯爵である。この状況に苛立つのも分かるが、私もこの場所で2日待機しておる。門に文句を言いに行くのはやめにしなさい」


ムツキの馬車に物言いを言ったゲール伯爵の馬車の後ろには何台か貴族の物と思わしき馬車が並んでおり、入門を待っている様子であった。


ムツキは、馬車から顔を覗かせると、門番にも見せた書状をメルリスにまたゲール伯爵の馬車まで見せに行くお使いを頼み、それを確認したゲール伯爵の表情が変わったのを確認してから話し始めた。


「すまないが、私達が先に行けばこの規制も早く緩和される可能性があります。その書状に免じて先に行かせてください」


「これは、差し出がましい事をしたようだ。申し訳なかった」


「いえ、この状況ですから」


ゲール伯爵とは、言い争いなどになることも無く、ムツキの馬車は門に向けてまた動き始めた。


ゲール伯爵は、別に先に通されるムツキにいちゃもんをつけたかった訳ではなく、苛立って門まで文句を言いに行く貴族達をあそこで宥めていたのであろう。


ムツキ達が、了承を得て門に向かっているとは、この状況では判断できなかったのであろう。


なので、事情を理解した後はすぐに頭を下げたわけだ。


ムツキ達が目上の人間だと理解して冷や汗は出たのだろうが、貴族の中で、そこで言い訳せずに頭を下げられるのは、しっかりとした貴族なのだと分かる。


ムツキ達は、ゲール伯爵に好印象をもったのであった。



そして城に着くと、この国も門の所まで国王がやってきており、ムツキ達を出迎えてくれた。


「ようこそおいでくださいました。 しかし、今はムツキ様をもてなす余裕がこの国にはございません。それどころか、失礼を承知で言わせて貰えばムツキ様の手を借りたく思っております。 ムツキ様はドラゴンを従えるほどの力をお持ちです。我が国の東の森で、ドラゴンの息吹ブレスと思われる爆炎が確認されました。

国民を隣の国に避難させるように準備をしていたのですが、その、ムツキ様の力でドラゴンを従えて頂ければ問題は解決する訳でして……」


国王は、最後の言葉を言いにくそうに話した。


常識的に言えば、いくらムツキがドラゴンを従えていようとも、新たなドラゴンを従えて欲しいとは、口が裂けても言えない事である。


新たなドラゴンを従える。つまり、ドラゴンを討伐して欲しいと同義であり、命を捨てろと言っているような物だからである。


しかし、その不敬な言葉を口に出すのは、それを口に出しても国を民を守りたいという意思の表れであろう。


その言葉を聞いて、ムツキは申し訳なさそうに口を開いた。


「すいません。多分、あなた方が観測したドラゴンの息吹ブレスは私の魔法でして、ここに来る途中で大量の盗賊を焼き払いましたので。なので、この厳戒態勢はする必要のない杞憂だと思うのです」


ムツキの発言に、国王は理解が追いつかずにポカンと口を開けた。


家臣の1人が国王に耳打ちをして、ゆっくりと頷いた国王は、ムツキ達の話を詳しく聞きたいと申し出た。


ムツキは、さらに詳しい事情説明の為に、城の中に通されるのであった。





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