第148話 盗賊
ムツキ達ののんびりとした旅にも、トラブルが訪れた。
前門の虎、後門の狼。
馬車が進む前には盗賊が待ち構え、背後からも盗賊が追いかけてきている。
普通の馬車ならば絶対絶命の状況でさる。
しかし、盗賊達が追い詰めようとしているのは人の頂点である。
その事を知らない盗賊達は、見たこともない高級な馬車に、舌舐めずりをして追い詰めていた。
馬車の中では、ムツキとエレノア達が話をしていた。
「ムツキ様、盗賊というのは、人として認めてはいけないのです」
「はい。奴らは食糧を食い荒らす害獣と一緒。放置しようものなら他の被害を生み、その被害は広がっていくばかり。農民や傭兵、騎士から盗賊に落ちたとしても同じ事。不作の村には申請すれば国の支援があります。国が飢饉に陥れば属国に手を差し伸べる国があります。盗賊に落ちた時点で、その者達に言い訳の余地などなく、国に住くう害獣なのです」
エレノアとシャーリー2人の意見は辛辣であるが、それがこの世界のルールである。
人の営みから外れ、物と命を奪う盗賊になれば簡単に金を稼ぐことはできるだろう。
しかし、それによって被害を受けるのは国であり、その行いに、国は温情無く死刑を宣告する。
勿論、盗賊を生きたまま捉えれば賞金が出るが、ムツキ達はお金に困っているわけでもないし、生捕りにした後、街まで連れていくのが大変である為、一般的に傭兵達が盗賊に対処した場合でも、大体の場合は殺しておしまい。
死体によってくる魔物による二次被害を防ぐ為、火に余裕があれば燃やして終わりである。
今回の場合は、馬車を挟み撃ちにするほどの規模になっている為、国が対処するにも手こずっているのであろう。
ムツキは、エレノアとシャーリーの話を聞いた後、御者に馬車を止めるように指示して、馬車を降りた。
その様子を見て、盗賊達は観念したのかと何かを叫んでいるが、話を聞く時間も勿体なかった。
ムツキは、魔法を発動して、後ろから追いかけてきていた盗賊を先に爆炎で燃やし尽くした。
その光景を見て、馬車の前に居た盗賊達は腰が抜けるか、慌てて逃げようとしているが、そんな暇があるはずもなく、ムツキの三発目の魔法によって爆炎に包まれ、跡形も無く消し飛ばされた。
ムツキが爆炎の魔法を使ったのには理由がある。
御者の目の前で風の魔法などで血飛沫を撒き散らして体調を崩されるのはさけたいし、血飛沫で馬車が汚れるのも避けたかった。
なので、御者に《いないないばあ》のスキルが進化した暗闇の魔法で視界を塞ぎ、一瞬にして燃やし尽くしたのであった。
御者は、盗賊が死んだ実感がないままに荒事が終わり、やはり自分は、ムツキの部下でよかったと再確認しながら馬車を走らせるのであった。
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