第150話 意外な考え方

ムツキ達は、城内に通された後に、先程の話をもう一度細かく説明をした。


その話を聞くうちに、どんどんと国王の顔が青くなっていくのがムツキにも分かった。


ムツキは問題が解決したのにどうしたのだろうと考えていると、隣に座るエレノアが国王に対して苦笑いで話しだした。


「余計な憶測は不要ですよ。ムツキ様は善意でこの話をしに入門を急ぎました。どちらかと言うと、騒ぎを起こした事を申し訳ないとまで思っておいでです」


「ははぁ! ありがたき思いで一杯にございます。国を上げてお礼の式典を」


「要りません!」


「しかし」


「なぜムツキ様が貴族や王族にならずにいるかといえばその様な式典が面倒くさく、自由でいらっしゃりたいからです。私達は新婚旅行で海を見にいく途中。派手な歓迎は要りません。 この街にも、通る故に挨拶に来たまでです」


話の流れがムツキには理解できなかったが、その後はムツキの事を持ち出さずに、ドラゴンの脅威が去ったとして国の騒ぎの沈静化を行う事になった。


せめてもの歓迎をと、一泊だけ城に滞在して食事を振る舞われる事になり、ムツキ達は滞在する為の部屋へ通されて自由な時間である。


「結局、国王はなんであんなに顔を青くして狼狽えたんですか?」


身内だけになったので、ムツキはエレノアに質問をした。


「あの国王はそこまで考えなくともとは思うのですが、ムツキ様の強さに最悪のケースを思い浮かべたのでしょうね。ですけど」


説明するエレノアは前置きを話しながら苦笑いである。


「自国が放置して手をつけられなくなった盗賊がムツキ様を襲ったという事実だけでも国際問題になりかねません。ムツキ様の属国であるドラゴニアとエクリアが抗議してきてもおかしくないのです。それに、その盗賊の対処をムツキ様が代わりにしてくれたにも関わらず、故意ではないとはいえ確認を取る前に国民に避難指示を出して、騎士達で討伐隊をくんでいたのです。ドラゴンという災害から国を守る為、負けると分かっていながらも最大戦力を用意していたはずです。揚げ足を取ろうと思えば、ムツキ様の命を狙ったと言って、何かを要求されたり、戦争を仕掛けられてもおかしくない状況ではあったのです」


そんな無茶苦茶な。とムツキは思うが、ムツキの方が位が格段に高く、状況だけ見れば、国の不手際で危険に晒した。自分をドラゴンと言って討伐しようとしたといちゃもんをつけられる状況だったのである。


傲慢な王族や貴族なら本当に言いかねない事で、謝りに来たムツキの方が珍しい。


問題にしないまでも、盗賊を討伐したのだし、謝罪などという考えにはならないのである。


ムツキの説明のように、自分が大事にしたばっかりに、などといった説明の仕方にはならないのだ。


しかし、その憶測を国王が口から出した瞬間、ムツキに対しての不敬罪にもなる為、問題は更にややこしくなる。


気が動転して、国王が余計な事を口にしない様に、エレノアが釘を刺したのであった。


それを聞いたムツキは、やはり貴族の考え方は難しいと理解できなかった。


盗賊の件は確かにそういう考え方もあるかとも思ったが、その後の自分に向けてのうんちゃらかんちゃらはもう肩を当てに行くチンピラの発想である。


何はともあれ、無駄な騒ぎにならずに国を出る事ができるのはいい事である。


次の国はやっと目的の海のある国だ。


翌日、国王に頭を何度も下げられながら、ムツキ達は城下町を出るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る