第145話 一件落着

「そ、そんなバカな! この店はもう終わりのはずだ!」


「貴方の目にはこれが潰れそうな店に見えるのでしょうか? だとしたら眼科に行く事をおすすめしますよ」


元に戻って何事もなく営業出来そうな店に、ルノモンは悲鳴のような声を上げて、ムツキはそれに対して皮肉を言った。



この状況は、単純にムツキのスキルで馬車や倉庫を隠していただけだ。


というのも、ムツキの収納スキルは無制限に物が入る。


なので、馬車も倉庫も倉庫の中身も全て収納していただけであった。


馬車や倉庫に火をつけられたとして、馬車はともかく、倉庫は周りに被害を及ぼさない程の短時間で消し炭になるまで燃え尽きるのは流石に無理であろう。


ルノモンが依頼した男が、火をつけた時には、馬車や倉庫を魔法でガードしており、無傷であり、一旦離れた隙に、用意していた木材とすり替えて火をつけ、風魔法を駆使して燃え移るのを防いだのだ。


店の商品に関しても、同じようにスキルである。


すべてをうまく終えたと、ルノモンに報告した後、暴漢達は全て捉えて、事の全てを吐かせてある。


それをちゃんと録音済みだ。


その事をヘルネル達に話して、ベリーナに一芝居打ってもらったのだ。


この事は話し合いで解決できる問題かといえば難しいので、街の住民にこの事を周知して、住民を味方に付ける作戦だ。


まさか客を蔑ろにする発言を、客達の前でするとは思わなかったが、こうなった以上、ルノモンの店を使う住民は少ないだろう。


もしかしたら、宣言とは逆に、大幅に割引すれば客は来るかもしれないが、安さに集まる客の人数はしれているだろう。


この街は、そこまで貧しいわけではない。


騒ぎを聞きつけて、兵士が駆けつけたので、ムツキは暴漢を引き渡して終わりにしようと考えていた。


しかし、ルノモンは諦めが悪いようである。


「兵士さん、こいつらがあの方達を暴行して出鱈目を風潮して私の店の営業妨害をしてくるのです」


「なんですと! それは本当ですか?」


兵士は、ルノモンの言い分を聞いて、ムツキの言い分を確認して来た。


「違いますよ、実はですね、」


ムツキはこれまで起こった事と、話の流れ、暴漢達の引き渡しについてを話した。


「兵士さん、私はこの街の為に一生懸命働いて来ました。こんなどこの誰かもわからない奴のどちらを信用するのですか!」


ルノモンは、兵士の情に訴えかけるが、ムツキは付き合う気は無かった。


「兵士さん、私の身分はちゃんと証明できますよ」


ムツキが自分の身分を証明するための紙を兵士に見せると、兵士の顔色が変わった。


「ムツキ様、この街の治安を守っていただき、ありがとうございます。ここからは、私達にお任せ頂ければと思います!」


兵士は、ムツキに礼をしてそう叫んだ。


「よろしくお願いします。ちゃんとした処罰が降りるように願ってますよ」


「は!」


兵士はもう一度礼をすると、暴漢達は勿論、ルノモンとカバレッタまで連れて行った。



これで、この店に迷惑をかける奴は居ないだろう。


街の人達に、これからは問題なく営業できる事を説明して、この一件は落着したのであった。



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