無能と言われた召喚者、詐欺スキルにて有能以上へと至る

第144話 勘違い

ムツキに全てをバラされた事に、ルノモンは狼狽えた。

「で、デタラメだ！こんなのは貴様が勝手に作ったデタラメのはずだ！」

ルノモンが叫んだ言葉に、ムツキは反論せずに頷いた。

「確かに、このスキルの詳細が分からなければ戯言だと思われてもしょうがないですね」

「ほらみろ！」

ムツキはが引いた事で、ルノモンは声を大きくして否定した。

「ただ、私はこれが本当だと主張しましょう。この方達は自分の罪を認めているわけだし、この店にこれから揉め事は起こらなくなるはずです。その後、これを聞いてお客さんがどちらの店を選ぶかは自由です」

ムツキはルノモンではなく、周りの野次馬に演説するようにはなした。

それを聞いて、ルノモンは部が悪いと感じたのか言い訳をやめた。

「だったらなんだと言うのだ！この店はもう終わりだ。火事で在庫もない。そいつら暴漢のせいで品物も売れる状態じゃない。俺達が手を貸さなければ潰れる店だ！この街にはここと私の店しか大きな店はないんだ。片方に品物がないなら、私の店で買い物をするしかないだろう！　宣言しておく、私の店は明日から値段が1.5倍だ！それでもこの街の住人はウチで買い物するしかないんだからな！」

ムツキの証拠がスキル故に証拠として認められるか分からない以上、ルノモンやカバレッタを逮捕ができないのだろう。

だから、この店の吸収合併を諦めて潰す方向にシフトしたのだ。

ルノモンの目的は街の客の独占であった。

ライバルがなくなり、自分の店しか無くなれば、商品の値段を釣り上げても街の人は買うしかなくなる。

ムツキが元いた日本と言う世界では独占禁止法として禁止されていた事を実践しようとしていたのだ。

息子の願いなどはついででしかなく、自分のやった事が明るみに出て疑われようと、相手の店を潰し、捕まりさえしなければそれで勝ちなのである。

今の状況は、相手の店が営業不可能で、自分の勝ちが決まっているので野次馬に見られても平気だと思っている。

「なるほど、そんなにお客様を蔑ろにして大丈夫なんですか？」

「ふん！　この店が潰れてさえしまえば客は私の店で買うしかないのだから一緒だ！」

「本当にそうでしょうか？」

ムツキが笑って指を鳴らすと、燃えたはずの馬車も、在庫が置いてある倉庫も、荒らされたはずの店も、全てが何事もなかったように元に戻っていた。

「さて、貴方はどうしてこの店が潰れるだなんて思っていたのでしょうか？」

問題なく営業できる店を背に、ムツキは笑ってルノモンに問いかけたのであった。