無能と言われた召喚者、詐欺スキルにて有能以上へと至る

第143話 証拠

「カバレッタ君、帰りなさい。この件は君のお父さんにも断ったはずだ」

「なんだと！俺がこの店を救わないとこんな店すぐに潰れるんだぞ！」

カバレッタは、ヘルネルの言葉にそう叫んだ。

「カバレッタ、一旦引きなさい。周りの目を考えろ！」

カバレッタの父であるルノモンも騒ぎを気にして止めようとするが、頭に血が昇ったカバレッタは止まらなかった。

「なんでだよ、こうすればこの店もベリーナも俺の物になるって言ったじゃ無いか！」

「黙りなさい！」

暴走したカバレッタにルノモンは怒鳴って言葉をやめさせた。

野次馬がいる中で何でもかんでも喋られるわけにはいかないからだ。

「いやあ、その話もっと聞きたいですねえ」

カバレッタが話すのを辞めたのに、店の中から1人の男性が話の続きを質問した。

「誰だ！」

「いやあ、私の名前はムツキと言いまして、このお店でしばらくお世話になってたんですよ。そしたら何か悪巧みが聞こえて来ましてね？」

店の中から出て来たのはムツキであった。

ムツキの喋る内容に素知らぬ顔をしながら、ルノモンは話を否定する。

「何を言ってるんですか、悪巧みだなんて、私達は困ってるヘルネルさんを助けようと___」

「自分で仕組んだ事なのにですか？」

「なにを証拠に！」

「雇った人間にこの店の商品に難癖をつけさせたり、この店を襲われたり、それに、燃やそうともしましたか？」

ムツキが真相を語る中、ルノモンはニヤニヤと笑ってそれを否定した。

「出鱈目ばかり、証拠もないのに適当な事を言うな！　兵士様に突き出すぞ！」

「そうですか？では実行犯に聞いてみましょう」

ムツキが指をパチンと鳴らすと、ムツキとルノモンの間に、縛られた状態の男達が急に現れた。

「この人達が全てを吐いてくれたんですよ。知り合いですよね？」

「知りませんな、そんな人達の事なんて」

ムツキの問いに、ルノモンは知らぬ存ぜぬで突き通す気の様だ。

「では、これはどうですか？」

ムツキがまた指を鳴らすと、以前ムツキが聞き耳を立てた内容が大きな後で流れ始めた。

『最後の一押しで仕入れをした馬車に火をつけてやりましょう。ボヤまで出せば、住民の目はさらに厳しくなるはずだ。隣の家にも燃え移れば街に居られなくなってもおかしくない。そこに手を差し伸べてやればいい』

『後は息子の希望だ。娘を手に入れてやらねばな』

『家族思いな娘なのでしょう？　店を助けると思えば首を縦に振りますよ。親がいる所で話せば親が止めるでしょうから、裏で脅さないといけないでしょうがね』

『なるほどな。お前も悪い奴だ』

『成功した時に金さえしっかり払ってもらえりゃ、多少後ろ暗い事もやりますよ』

『『ハーハッハッハ！』』

「な……」

「録音のスキルなんですけどね、悪巧みは全部つつぬけですよ？　まぁ、この話を先に伝えてあるのでお二人が首を縦に振る事はないでしょうけどね」

ムツキが出してくる証拠を見聞きして、集まっていた野次馬達の目はルノモンとカバレッタに集中するのだった。