第142話 騒ぎ2
カバレッタは、自分の持っている1番いい服を着て出かけた。
向かうのは愛しのベリーナの所である。
カバレッタはルノモンの息子、ベリーナはヘルネルの娘である。
カバレッタは父親に頼んで、ベリーナを自分のモノにする策略を立ててきた。
と言ってもそのほとんどが人任せだった訳だが、策略は最終段階に入り、カバレッタは指示された通りに店の事をチラつかせて結婚を迫り、首を縦に振らせるだけであった。
その為に父親のルノモンが雇った輩が火事を起こしたり店を荒らしたりと、助けが無ければどうにもならない程に追い込んでくれたのだ。
「さて、決めに行くか」
店の前で、ベリーナを見つけて声をかけに行く。
ベリーナは店を荒らされた次の日も健気に働いている。
そんな事をしても意味ないのに。とバカにしながらも、そんな所も可愛いと熱のこもった目でベリーナを見た。
カバレッタの思いは幼少期からのものだ。
理由は単純で、父親に叱られて落ち込んでいた。
その時に声をかけてくれて、飯抜きにされていたカバレッタに、自分の店の売り物の食べ物を内緒で分けてくれた事が始まりだった。
その後も、店がライバル店だから大っぴらには仲良くできなかったが、見守っていたり、1人の時に声をかけたりしていた。
大人になって、店の合併の話を父がしだした時はチャンスだと思った。
そして架け橋として結婚すれば全て丸く収まると思った。
なのに、ベリーナは知らない間に男を作っていたのだ。
裏切られたと思った。
だから、何としても手に入れてやると父に相談した。
そうしたら、父もあの店が手に入るからと乗り気になってくれて、ここまで舞台を整えてくれたのだ。
カバレッタは、気合いを入れてベリーナへ声をかけた。
「大変そうだね、ベリーナ」
「カバレッタ、もう来ないでって言ったわよね」
カバレッタが声をかけると、ベリーナは顔を顰めてカバレッタに言い返した。
「そんな事言うなよ、店を立て直す方法を教えに来てやったんだぜ?」
「どうせあなたと結婚しろって話でしょ!いやよ!」
「な、どうしてだ!俺の物になれば店は助かるんだぞ?」
「人を物扱いしないで!」
2人の言い合いに人が集まり始めた。
最近騒ぎが続いている店だから、またかと言った様子だが、遠巻きに見る野次馬達は、気になるのか様子を伺っている。
「貴方達の力なんか借りなくても、店は大丈夫だもの!」
「そんなはずないだろ!この店はもうおしまいだ!」
「なんでそんな事がわかるのよ!」
ヒートアップしていく2人を止めるように、店の中と外、2人の両親が割って入り、騒ぎは更に大きくなっていく。
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