第141話 騒ぎ1

小火ぼやが起こった次の日の昼、ムツキがお世話になっている商店を暴漢が襲った。


武器を持った族が商店を襲い、騒ぎになった。


兵士が来る前に暴漢は逃げてしまったい、荒らされた店内で兵士が事情聴取をしており、野次馬が店内を覗いている。


「ご協力ありがとうございました。こちらでは最近客と揉めていたとの情報もありましたので、怨恨も含め操作を致します、では!」


兵士は事情聴取を終えて帰って行った。


兵士が帰っても、店内が荒れている様子を、野次馬が遠巻きに見ている。


その野次馬の中から、1人の男性が店内に入って来た。


「いやあヘルネルさん、大変な事になりましたね」


「ルノモンさん……」


ヘルネルとは、ムツキがお世話になっている店の店主の名前である。

ルノモンはライバル商店の店主である。


「これでは営業は無理でしょう。最近お客様ともうまく行っていないと聞きます。こんな状態でやっていけるのですか?」


「はは、正直昨日の火事といい、今日のこれといい、店を続けるのは厳しい状況です。しかし、私は店主として従業員達を守らねばならないので彼らが私の元を離れて行くまでは頑張ろうと思います」


ルノモンの問いに、ヘルネルは乾いた笑いをなんとか絞り出しながら答えた。


「気持ちだけでは何もできないでしょう。理想を語るだけでは商人として下の下です。どうですか?合併の話、受け入れてくれませんか?うちの息子とそちらの娘さんを結婚させて店を一つにすれば、この街で更に商売がしやすくなるでしょう。そうすれば傾いたこの店に支援もできます。従業員が路頭に迷う事もない」


ルノモンが笑顔で打開策を提案するが、ヘルネルはその提案に首を横に振った。


「それはできません。娘の結婚は娘がきめることです。なので、私が店の為に娘の結婚を決める事はありません。これから頑張って店を建て直せるように頑張りますよ」


ヘルネルは、空元気の力瘤を作って提案を断った。


「……そうですか。無理強いはしませんよ。ですが、いい返事がもらえれば私はいつでも手を差し伸べると覚えておいてください」


ルノモンは、それだけ伝えると、野次馬をかき分けて去っていくのであった。








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