第139話 隠密

ムツキは、みんなで食事をした帰り道に、エレノア達に先に帰ってもらい、1人で街を歩いていた。


《索敵》を使って先程のクレーマーの位置を調べて、《隠密》を使ってクレーマーが居る場所までやって来ていた。


店主や奥さんに聞いた所、急にクレーマーが現れるようになり、店の中で騒ぐ為、客足は遠のいていると言う。


それに、不幸続きとの話もあったので、クレーマーの事を調べてみる事にしたのだ。


クレーマーがいる場所は、ムツキが助けた男性とは違う店であった。


普通ならば、中の様子など分からないのだが、ムツキはスキル《盗聴》によって聞き耳を立てた。


この盗聴のスキルは《聞き耳》スキルが進化した物なので、この状況ではよりクリアに聞こえる。


壁に耳を当てていると言う怪しい行動ではあるが《隠密》スキルのレベルが高いムツキは周りに気づかれる事はない。


このレベルまで上がると、もう店の中に入って行っても気づかれないのではないかと思っているが、もしものことがあるのでぶっつけ本番で試す訳にはいかない。


集中すれば、中の声がはっきりと聞こえてくる。


「なに?失敗しただと?何やってるんだ!何の為に雇ってると思ってるんだ!」


「すいませんねえ。次は手下を使って店を襲ってしまおうと思うんですよ」


「なに?そんな事をして大丈夫なのか?」


「心配無用ですよ。街の外に居る仲間を使います。それに、もうあの店は客足も少なくなって経営状況も悪くなっているはずです。だから、店を襲った後に、経営統合の話を出せばのってくるでしょう」


「なるほど?」


「最後の一押しで仕入れをした馬車に火をつけてやりましょう。ボヤまで出せば、住民の目はさらに厳しくなるはずだ。隣の家にも燃え移れば街に居られなくなってもおかしくない。そこに手を差し伸べてやればいい」


「後は息子の希望だ。娘を手に入れてやらねばな」


「家族思いな娘なのでしょう? 店を助けると思えば首を縦に振りますよ。親がいる所で話せば親が止めるでしょうから、裏で脅さないといけないでしょうがね」


「なるほどな。お前も悪い奴だ」


「成功した時に金さえしっかり払ってもらえりゃ、多少後ろ暗い事もやりますよ」


「「ハーハッハッハ!」」


ムツキは、この企みを聞いて、阻止する事を決めた。


話が終わってクレーマーの男が出てくると、その後を隠密を使ったままつけて行く。


あの話だと、この後にこの男は手下達に合うはずである。


スキルのおかげで気付かれることもなく、ムツキの尾行は続くのであった。


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