第137話 クレーマー

ムツキ達は用意してもらった部屋に案内されて、くつろいでいる。


従業員の寮も兼ねているらしく、部屋の数が多いので、御者とメルリス、ムツキ達で3部屋用意してもらった。


部屋を用意してもらったのに申し訳ないが、ベッドに座った時に固かった為、ベッドの上に低反発のマットレスを敷かせてもらった。


少しゆっくりした後は、この街で有名な飯屋を教えてもらってそこに行こうと言う話をしている。


時間もいい時間になったので、外に出る為に階段を降りて店舗の方へ向かった。


店舗の方にたどり着くと、店主の男性の声が聞こえてきた。


「申し訳ありません。すぐに返金致しますので」


「返金すれば済むってもんじゃねえぞ!こんな偽物を売りつけやがって!」


ムツキ達が店舗を覗いているのに気づいた奥さんは、ムツキの方へ近づいてきた。


「すまないね。売ったものが気に入らなかったみたいでね。使い方を説明したら問題なく使えるんだが、交換も返金も納得してくれなくてね」


「なるほど……」


この店は雑貨を扱っている様なのだが、それにクレームをつけてきたのであろう。


「交換も返金もダメとなればどうしたらいいのか」


「あん、そんなの誠意にいまってるだろ!お前は誠意が足りない!」


「誠意と言われましても……」


ムツキはふと疑問に思った事を奥さんに質問した。


「この国の法律ではお金を要求するのはダメなのでしょうか?」


「そうだね。物以上のお金を要求するのはダメだね。でも、ああしつこいとお金で解決しないと終わらないからねぇ。最近多くて困った物だよ」


「なるほど」


ムツキは話を聞いて納得すると、店舗の方に顔を出した。


「すみません、店主もこう言ってますし、返金で許してもらえませんか?」


「ああん、なんだオメエは!誠意が足りねえんだよ、この店は!」


「私は店主が誠意を尽くしている様に見えますが、これ以上の誠意とはなんなのでしょうか?必要な誠意と言うのを教えていただきたい」


これはムツキの元の世界でのクレーマー対処法である。

一時、クレーマーによる詐欺が流行った時期に、ニュースで見た事がある。


精一杯の誠意を見せている事を話して、相手にこれ以上何をして欲しいのかを尋ねるのだ。


ここで、相手がハッキリと金銭を要求すれば恐喝などの罪でこちらが訴える事ができる。


金銭目的のクレーマーはそれ以上の要求を言う事ができず、引くしかなくなるのだ。


「ちっ、分かったよ!返金で許してやる!」


この国も法律で恐喝になる様なので、この方法は有効なようで、悔しそうにクレーマーは去って行った。


なんとかこの場の騒ぎは収まったのであった。

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