第136話 フルーツジュース

ムツキ達は日が暮れる前には男性が店を出す街にたどり着いた。


「本当にありがとうございました。よろしければ私の家に泊まって下さい」


「では、お言葉に甘えましょう。よろしくお願いします」


ムツキは男性の申し出を受け入れた。


宿代をケチる必要は無いのだが、旅をする中で男性の人柄もわかり、お世話になるのも良いかと思えた。


それに、話の中で、男性には家族がおり、奥さんと娘がいると言うのも安心できる要素の一つであった。


男性の家は結構大きな家であった。


「どうぞ、そちらに馬車を停めて下さい」


馬車を停めて、男性の家に案内される。店舗と一体になっている家で、店舗では奥さんと従業員がまだ働いているようであった。


「今帰ったよ。この方達に助けてもらってな、うちに泊まってもらう事になったよ。部屋は空いてるだろ?」


男性が、店舗に入り帰って来た事とムツキ達が泊まることを報告すると、店にいた女性がムツキ達を見て笑顔で返事をした。


「おかえり! 主人を助けてくれたんだって?悪かったね。ゆっくり泊まってってくんな。おい、ネーリアに部屋の用意をさせな。今倉庫に居るだろうから!」


男性の奥さんは、店員に指示して部屋の用意をしてくれるようだ。


「それじゃ、サム、荷物を倉庫に頼むよ。それで、店の調子はどうだった?」


男性も店員に指示を出した後、奥さんに話しかけた。


「やっぱり芳しくはないね、あっちの店のが贔屓されてる感じはあるが、お得意さんも来なくなったのは痛いね。って、お客さんの前でする話じゃないね。部屋の準備ができるまでリビングで、飲み物でも出すよ!」


男性の奥さんが恥ずかしそうに笑ってムツキ達をリビングに案内した。


「旦那を助けてすれた恩人だからな、美味しいフルーツジュースを出したげるよ!」


そう言って男性の奥さんが取り出したのはボトルに入った液体であった。


それを2種類グラスに注いだ後、白い液体を注ぐ。


それを一混ぜした物をムツキ達に出した。


「甘くて美味しいです!」


「うん。これは、フルーツ・オレだね」


2種類のフルーツシロップをミルクで割った飲み物で、とても美味しかった。


「フルーツ・オレですか?」


ムツキの言葉を聞いてシャーリーが質問した。


「私の故郷ではフルーツをミルクで割った物をそう言うんですよ」


「そうなんですね、フルーツ・オレ美味しいですね」


ムツキ達は、部屋に案内されるまでの間、リビングでくつろがせてもらうのであった。


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