第135話 よくある人助け

ムツキ達が馬車で移動していると、道に停車している馬車を見つけたと、御者がムツキに相談をしてきた。


その馬車の横には、男性が車輪の辺りを覗き込んでいるのが見える。


「トラブルですか?」


御者にムツキ達の馬車を横付けしてもらい、窓を開けてムツキは声をかけた。


ちなみに、この世界の馬車は普通窓だけ開ける事はできないが、この馬車は昔の車のようにクルクルとレバーを回すと窓が開く仕掛けがある。勿論、ゴムのパッキンも使っているので、夜に寝る時に隙間風が入って来るという事もない。


「ああ、車輪がやられてしまったようで……これは荷物を捨てて馬車だけで帰るしかないかなあ」


男性はとても困った様子で乾いた笑いを吐きながらムツキの質問に答えた。


少し話を聞くと、どうやらこの男性は商人のようで、仕入れをした後に街に帰る途中で車輪が壊れてしまったらしい。


「それじゃ、私が直しますよ」


ムツキの提案に男性は何を馬鹿なと言った様子で返事をした。


「バカ言っちゃいけないさ。こんなのすぐに直せるもんじゃない。これは諦めるしかないのさ。戻ってきても、通りかかった人達に荷物を取られた後だろうからなあ」


「大丈夫ですよ」


男性が否定するのを無視して、ムツキは馬車を降りて、錬金術で馬車を一瞬で直してしまった。


「終わりましたよ」


「な、なんだこりゃ!本当に直ってる!」


錬成反応でピカッと光ったら直ってしまった車輪を見て男性は目を向いて驚いた。


その後は、男性がお礼をしたいと言うので、馬車を並べて男性が住む街へと向かっている。


勿論そんなたいそうな物を望むわけではなく、美味しいご飯屋を紹介してもらう予定だ。


男性が住む店は、規模は小さいものの、バンヤンハイのように商業が盛んな街らしく、飲食店もそうだが、他の物も流通が盛んな為に色々とあるらしい。


海を見に旅行中だと言う話を男性にしたのだが、商業の街なのでたまに干物が入って来るという話を男性が言っていた。


ただ、干からびて匂いがきつい汚物のような匂いのする物を買う人はあまりおらず、嫌がらせに使われる物だと言って男性は苦笑いで話した。


どうやら街で干物はジョークグッズの類らしい。


そのせいで、国を越えて海の方へ向かう人はそっちが故郷の人間くらいらしい。


なので、海の方へ旅をしていると話したらとても驚かれた。


色々と話をしながら、男性が店をやっている街まで、旅をするのであった。

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