第134話 鍋

ムツキ達の新婚旅行は、また一つ国境を越えた。


そして今日の野宿の準備をしながら、晩御飯の準備をしていた。


「ムツキ様、これくらいでよろしいですか?」


「そうだね、煮たら食べやすくなるからそれ位の大きさで大丈夫ですよ。だけど、包丁を寝かせて斜めに切りましょうか、その方が味が染みます」


シャーリーが、ムツキに白菜の切り方を相談していた。

シャーリーが包丁を当ててこの位かと聞いた所をムツキは斜めに切る様に指示した。


「見てくれムツキ、上手くできる様になっただろう!」


アインは自慢げにニンジンの飾り切りを見せた。上手に花の形に切れている。


「上手くなりましたね。もう私が教える必要はないかな?」


「な、やっぱりまだまだだ!今度は違う形を教えてくれ!鳥にもしていただろう?あれだ!」


ムツキに教えてもらう時間は独り占めができるので、アインは慌てて否定をした。


「大丈夫ですよ。また教えますから、今日は花をたくさん作ってください」


「わかった!」


クスクスと笑いながらムツキが了承すると、アインは残りをまた切り始めた。


「おネギと豆腐は切りましたし、大根はシャーリーさんが切ってくれますからこれで下ごしらえは終わりでしょうか?」


エレノアの確認にムツキは頷いて返事をした。


「そうですね。後は御者さんが火を起こしてくれているはずですから火にかけるだけですね」


「それでは私はメルリスの様子を見てきますね!」


メルリスはムツキ達が食事の準備をしている間に馬車のベットメイキングをしてくれている。


御者が火を起こしているので、2人で行うテントの設置は終わっているはずである。


今日の晩御飯は鍋である。


この旅の間は、料理は夫婦の作業として凝ったものは作らないが、みんなで行なっている。


夫婦水入らずの時間を邪魔しない様に、調理の間に御者とメルリスはテントの準備と馬車の準備をしてくれるのだ。


御者が火を起こしてくれたので、シャーリーの切った大根やアインが頑張ったニンジンを先に入れて火にかける。


火が通りにくい物から順番に。


最後に白菜の葉の部分やネギを入れて、ぐつぐつ煮える鍋は食欲をそそる。


勿論御者もメルリスも一緒に鍋をつつく。


絆を深め、家族といってもいいだろう。


日が暮れて、肌寒くなった平野の真ん中で、熱々の鍋を囲みながら、ムツキ達は心も体もあったまるのであった。

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