ムツキ達夫婦は、新婚旅行へと出発した。

新婚旅行のメンバーはムツキとエレノア、シャーリー、アイン。それから御者と世話係にメルリスを入れた６人である。

城から出て、今日中にはエクリアを出たいと思っている。

なので、馬車を引く馬にはムツキがバフスキルを使っている。

疲れ知らずで走る馬と、魔改造された馬車で、快適な旅が始まった。

「こんなに快適な馬車の旅であれば、こうして旅行？　に出る人は増えるでしょうね」

メルリスはこの馬車に乗るのは初めてだったので、驚いた様に呟いた。

旅行と言う言葉もこの世界になく、国を移動するのは辛い旅のイメージである。

馬車での移動しか無く、それ以外だと徒歩になってしまう為によっぽどでなければ長距離の移動はしない。

馬車に関しても、ムツキの馬車が特別なだけで、普通の馬車では体に負担がかかるので、それはそれで長旅はできない。

無振動で家にいる様な感覚で旅ができるムツキの馬車は、今でも外を見なければ移動してるのさえ分からない。

「ふふふ、だってこうやってお茶を飲めるなんて不思議だもの」

エレノアはメルリスの言葉に笑ってそう答えた。

「カップが揺れもしませんもんね。あ、シャーリー様、おかわりはいかがですか？」

「私はもういいわ、お腹いっぱい。ありがとうね、メルリス」

「いえ、そんな」

「それじゃあ私にもらえる？」

「はい、アイン様」

シャーリーとアインも、メルリスと馴染んで関係は良好だ。

しばらく時間が進んで、御者からノックで部屋の中に合図があった。

ムツキが馬車の中から顔を出すと、御者がそろそろ国境だと教えてくれた。

国境を越える時には色々とチェックがある。

エレノア達もムツキと結婚した事で平民になっているので、ここのチェックは必須である。

しかし、ムツキ達が誰なのかと言う身分証明はシュナイゼルとアグニールの連名で認めてくれているので、通過するのに大した手間はないのだが、平民としてのチェックは必要である。

簡単なチェックを終えて、身分証明の紙を見せて、国境を越える。

そうして、ムツキ達の新婚旅行は始まったのであった。

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