第124話 身内の式

結婚式も無事終了して、どちらかといえばこれからが本当の式が始まる。


身内だけの式、披露宴である。


先ほどの結婚式は、祝いの挨拶を受けるだけで、正直だれがどんなことを言っていたのかも覚えていない。


それに、挨拶されている間、挨拶が終わった貴族や、まだ順番がしばらく回ってこない貴族は、立食形式で軽食や飲み物を楽しみながらそれぞれ交流を持っている。


特に、最初に挨拶の終わったシュナイゼル王夫妻や、アグニール王夫妻、マルグリッド伯爵夫妻は、他の貴族に囲まれてそれぞれ話をしていた。


シュナイゼルやマルグリッド伯爵には娘の結婚の祝いは勿論の事だが、普段は今のムツキのように挨拶を延々と受けている国王が二人も出席して普通の貴族と同じように軽食を食べながら会話を楽しめるのだから、お近づきになりたい人間にとっては、モノにしたいチャンスであった。


その為、ムツキ達だけではなく、普段の社交界で挨拶される事になれているシュナイゼルやアグニールたちも、なれない話にお疲れの様子だ。


結婚式が終わって披露宴の時間はもう日が沈んでしまってしまっていた。


しかし、身内だけのこじんまりした式は気持ちの上では疲れを感じない。


先ほどの式ではさらっとした挨拶だったが、エリザベートとシャルノアはエレノア、シャーリー、アインの三人の花嫁をほめちぎっていた。


日本であれば、スマホのカメラロールが一杯になっている勢いだろう。


「本当に素敵だわ。娘のこんな素敵な姿をこの目で見られるなんて、生きていてよかった」


エリザベートは呪いのせいで病弱であったため、いつまで生きられるかわからない時期がらった。


それをわかっているからか、その言葉を聞いて、エレノアも「お母さま」とつぶやいて目をうるうるとさせている。


アインはそれを見てエレノアの背中をさすっている。


「シャーリーも、ほんとにきれいね。騎士になって浮いた話もない貴方がこんなに綺麗にしている姿、お兄ちゃんたちが見たら驚くわよ」


「そうでしょうか? 私のこの姿を見たら馬鹿にしてくる気がします。あの人達は胸の大きい人がすきでるから」


シャーリーはそう言って自分の胸をみた。


ムツキはシャーリーのスラっとしたスタイルを褒めてくれるが、やはりこれまで馬鹿にされて育っただけに自信はない。


「それは今までシャーリーに合ったドレスがなかったからだわ。ムツキ君は天才よ。親のひいき目だけではなく、ドラゴニアで一番美しいと思うわ。今日も見とれていた男が沢山いたわ。きっと先にあなたに声をかけなかったことを後悔していたわね」


シャルノアの言葉にシャーリーはクスリと笑った。


「ねえ、ムツキ君からもらった結婚指輪を見せてくれない?」


「あ、私もみたいわ」


エリザベートとシャルノアは今度はこの世界にない結婚指輪に興味津々だ。


やはり女性は永遠の堅いと言う意味を込められたロマンチックさにも弱いのだろう。


女性陣が盛り上がる横で、その話を外から見ながら、男性陣はその幸せな光景を肴に酒を酌み交わすのであった



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