第122話 指輪の制作

フェニーチェのバルバレスコにもらった宝石は、フェニーチェの宝石の中でも特殊な青い物であった。


その宝石で結婚指輪を作るのだが、まずはフェニーチェの宝石を加工をする所から始める。


そのまま使うには大きすぎるので、フェニーチェの宝石一つで3つを作る事にする。


結婚指輪は常につけるものの為、大きい宝石は必要ない。しかし、だからこそ加工に力を入れる。


宝石の加工のなかで、最も美しいとされる58面体。


ブリリアントカットと呼ばれるそのカットは、この世界では使われたことのない加工法であろう。


光効果を最も効果的に使い、青い宝石は加工前に比べて神秘的な輝きを放つ別の宝石へと姿を変える。


それに合わせる金属はこの世界で最も硬い金属を使う。


これも人間の生活圏にない金属で、ドワーフ達が住む地域のそばにある鉱山にある鉱石なのだが、正直、ドワーフ達も価値を見出していないので、簡単に譲ってくれた。


それこそブリリアントカットが開発される前のダイヤモンドと同じ様に、硬くて加工が難しく、思った様な加工ができない為、他の鉱石よりも価値が下がってしまう。


ただの硬い金属。それがこの金属である。


しかし、ムツキには関係ない。


錬金術を使えば簡単に形を思い通りに加工できる。


ムツキが贈る結婚指輪には、ムツキの思いと共に、意味を持たせる。


フェニーチェに貰った宝石は永遠を生きるフェニーチェから永遠の愛を意味し、加工が難しい世界一硬い金属は硬い絆を意味する。


こじつけではあるが、こう言うものは言ったもん勝ちである。


それに、指輪の形にもらこだわりがあった。


エレノア、シャーリー、アインそれぞれの指輪が少しずつ形が違う。


エレノアの物は宝石が真ん中に、シャーリーの物は宝石の位置が右寄りに、アインの物は宝石が左寄りに作り、宝石の無い自分の物も含めて、順番に重ねると一つの形になる様に作った。


納得のできる物が完成して、後は妻達に付けてもらうだけだ。


結婚式の日にちも迫ってきている。


この指輪を送った時の妻達の反応を想像しながら、ムツキはそれぞれの指輪を特別に作ったケースの中にしまった。

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