第121話 フェニーチェの祝福
火山の頂上に着くと、火山よりも熱く燃え上がる炎の鳥が鎮座していた。
「ドラゴンの童よ、またとんでもない小僧を連れて来たではないか」
フェニーチェは目を細めながら、ボロネとムツキを見てそう話した。
「バルバレスコ殿、我が主人がそなたにお願いがあるそうなので連れて参った」
ボロネが畏まった様子で、ここに来た理由を話す。
フェニーチェの名前はバルバレスコと言うらしい。
「頼みか。童の主人よ、私に何を頼みに来た?」
「あ、はい。実は私はこの度結婚するんですけど、妻に贈る物を探しておりまして。その中で私の故郷では宝石に意味を込めて贈るのです。 その宝石には永遠の愛を誓うのですが、永遠を生きるバルバレスコさんの宝石を渡せれば最高だなと思ってお願いに来たのです」
「ククク、そうか、フフフフ」
ムツキの話を聞いて、バルバレスコは笑い始めた。
「どうしましたか?」
「死して蘇る我でも、死ぬのは怖い。我よりも強い者が現れれば、恐怖を感じるのは変わらないのだ。しかし、その強者が私の宝石を言葉遊びの贈り物として選ぶとは愉快ではないか」
ひとしきり笑った後、バルバレスコは快く宝石を分けてくれる事となった。
「せっかく大陸の覇者が贈り物に選んだのだ。私の石の中でも特別な物を渡そう」
バルバレスコが自分が座っていた場所に頭を突っ込んであれでもないこれでもないと言ったように何かを探している。
その様子は少しマヌケであるが、一生懸命探してくれているのだから何も言わないでおこう。
しばらくして、バルバレスコは目的の物を見つけたのかクチバシに石を啄み顔を出した。
ムツキに手渡された大きな石は、フェニーチェに似合わぬ青い宝石であった。
「我は死して蘇り永遠の時を生きるが、たまに条件が合うと青い炎を纏う事がある。その時の石は青色なのだ。その青い石をおぬしにやろう」
バルバレスコは目を細めて微笑む様に話した。
「我は永遠を生きる代わりに番がおらん。世界にフェニーチェは我しかおらんのだ。だからこそ、心を通わせ、愛を育み、子を育てる他の種族を羨ましく思う。おぬしの未来に、幸せが溢れている事を願っている」
長い時を生きている為、考え方が達観しているが、それと共に、孤独も長く経験していると言う事なのだろう。
ムツキは話を聞いて、幸せになる事を誓うと共に、結婚して、子供ができたら、バルバレスコに見せに来ようと思った。
ここまで来るまでの道のりに対策は必要だろうが、頑張ればなんとかなるだろう。
バルバレスコの祝福を受けながら、ムツキとボロネは下山するのであった。
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