第116話 謝罪
エクリアに、赤いドラゴンが舞い降りた。
しょっちゅう飛んでくるドラゴンに、エクリアの民達はなれたもので、騒ぎなどはなく、平常運転だ。
今回馬車ではなくボロネでやって来たのは、エリザベートを早めに送って来た為である。
エリザベートはシュナイゼルの思いを汲んで、エレノアに寄り添って数日過ごした。
とうのエレノアは賊の事を怖がってもいなかったので、実質長めのバカンスであったのだが。
エリザベートは自分の役割を終わらせた後、日数的にシュナイゼルが城についた頃を見計らって、ムツキに頼んでボロネを出してもらったのだ。
本日エクリアに来たのはムツキとエレノアとエリザベートの3人で、アインとシャーリーはバンヤンハイでゆっくりと過ごしている。
ボロネを中庭に待たせて、ムツキ達は城の中へと入った。
エリザベートがいるし、ムツキも城の中を自由に動く事を許されているので、迎えも呼ばずに城の中を進む。
エリザベートがシュナイゼルの執務室をノックすると、中から返事が返ってきた。
許可を得たので中に入ると、部屋の中にはシュナイゼルと共に、第2夫人のバーバラがいた。
バーバラが部屋に入ってきた3人を見ると、空気が少しピリついたようにムツキには感じられた。
バーバラが3人の方にやって来るのをシュナイゼルは止めなかった。
エリザベートとバーバラが向かい合って、はじめに口を開いたのはバーバラであった。
「エレノアさん、ごめんなさい。私は自分の娘可愛さに貴方に辛い思いをさせたわ」
バーバラはしっかりと腰を折ってエレノアに謝罪した。
ユーリネの事である。
「バーバラお義母さま、私は許すとは言いません、ただ、もうきにしていません」
『許す』エレノアは、この言葉が、どれだけの効果をもたらすかしっている。
悪い事をしても、許すと一言言われれば、悪事をした記憶は段々と薄れていくのだ。
許されたのだからといって胸の支えが取れたように。
許されなければ、それは戒めになる。
悪いと思っているならば、覚えておいてもらいたい。
他の人にまたあのような事をしないように。
だからエレノアは許すとは言わないが、もう気にしていないと言ったのだ。
バーバラはその言葉を聞いてニコリと笑った。
バーバラはその後、エリザベートに向き直った。
「エリザベート様、体調がよくなられたようで何よりです」
「ええ。これからは、2人でシュナイゼル様を支えていきましょう」
エリザベートは、ムツキの家でムツキの家族の形をシュナイゼルが羨ましそうに観ていた事を知っている。
だから、これまでが何かあろうとも歩みよって新しい家族の形を作ろうと思っている。
和やかな雰囲気であるが、この後には、賊に関しての話をしなくてはならない。
シュナイゼルが緊張した面持ちで、ムツキをソファへと案内して自分も向かいの席に座る。
シュナイゼルのムツキに許しを乞う為の話し合いが、始まったのであった。
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