第115話 報告

時は少し遡り、シュナイゼルが王都へと向かってすぐの頃。


ムツキは1人家に帰って来た。


「お帰りなさいませ。あれ、ムツキ様お一人ですか?」


出迎えに出て来たエレノアが首を傾げた。


「ああ、中で話そうか」


「はい」


ムツキはエレノアを伴ってリビングへと向かった。


ムツキは、リビングにみんなを集めてシュナイゼルが王都へ戻った事情を説明した。


「もう、あの人ったら、私に気をつかったのでしょうね」


話が終わったら、エリザベートがそう言葉を溢した。


ムツキは、昨日の夜の話も含めて全てを話した。


内密に処理できれば伝えないつもりであったが、シュナイゼルが王都へ戻った以上、状況の説明は必要で、安心させる為に、家のセキュリティについてもしっかりと話が必要だったからだ。


それを聞いて、エリザベートはシュナイゼルが急ぎで帰る必要があった理由も、なぜ自分を置いて帰ったのかも理解したのであろう。


気を遣ったと言いながらも、ターゲットにされた娘のエレノアの頭を優しく撫でていた。


それを見て、ムツキはシュナイゼルがエリザベートを置いて帰ったのは、気を遣ったのもそうであるだろうが、実際は狙われていた事実を知って不安になるだろうエレノアの側に母親を置いていったのだと言う事に気づいた。


将来自分もそう言う気の使い方ができるだろうかと思う。


ムツキがそんな事を考えている間に、シャーリーは自分の両親にこの話を内密にする様に釘を刺している。


マルグリッド伯爵も、その辺りは心得ているし、同盟国として、そして国境を越えた家族として、必要であれば手を貸すつもりである事を、エリザベートに伝えていた。


マルグリッド伯爵に手を借りる程に問題が膨れ上がれば、相当状況は悪いということなので、ない方がいいのだろうが。


「でも、オスカール男爵がその様な行動を起こしたんですね」


対してエレノアはどこか他人事のようである。


ロウゲス・オスカール男爵は婚約者として教えられていたものの、それ以外は何も知らない人であったと言う事もあるだろうし、実害が全く無かったと言う事もあるだろう。


「でも、私もカイン様に剣を教わっていたのですが、ムツキ様に守ってもらえるから剣術の出番はありませんね」


「そうですね。では、事が収まってシュナイゼルさんとカインさんから許可が出れば、シャーリーやアインも一緒に狩りにでも行きましょうか」


シャーリーもアインも武術の心得がある。と言うより2人とも騎士だし、そう言ったおでかけも楽しいかもしれない。


事件はシュナイゼルに任せてやれる事はないのだし、この家の中にいれば安全である。


エレノアが怖がってなければ話を深刻にする必要は無いし、報告が終わった後は、ごく普通の日常が過ぎていくのであった。


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