第112話 忠誠を見せる為

ロザリィに話を聞くと、なんともずさんな作戦に唆されたものだとシュナイゼルは我が娘ながらにため息が出た。


ロザリィに対しての教育はどうなっていたのであろう。


エレノアと同じように家庭教師も付けて学校にも通ったはずである。


前回のユーリエの件といい詰めが甘いと言うよりも、子供の嫌がらせの延長のような考えで大事を起こしているように思える。


他者を蹴落とし、自分を上げる事を悪と言う訳ではない。


しかし、取捨選択が自分に都合が良いようにしか受け取らないのは問題であるし、シュナイゼルは今回、家族が仲良くできる未来を目指すと誓ったばかりである。


今回は幸いにも、こうやって発覚前にロザリィの口から事件の全容が分かった事で、減刑が可能であるし、シュナイゼル達が問い詰めた事を隠して、自ら自首しにきた事にすれば無罪とはならないものの、それに近い対応ができる。


勿論、ムツキへの相談は必要だろう。隠して行える様な事ではない。


叶うのなら、シュナイゼルはこのままロザリィを放り出す訳ではなく、バーバラと同じ様に離宮へ閉じ込め、バーバラともども家族平和に過ごせる様に再教育を施すつもりだ。


教育係の選定は各派閥に任せていたが、シュナイゼルが信頼する者に任せるつもりである。


しかしそれもこれも、この件をキッチリと片付け、ムツキへの忠誠を示した後の話。


シュナイゼルは、ロザリィの話により発覚した人物達の家の当主を呼び出す事にして、ロザリィには早々に謹慎をいい渡して、甘い顔を見せない様にカインの部下を監視につけた。



呼び出しは迅速にかつ緊急に行われた為、その日のうちに呼び出された当主達はシュナイゼルの元を訪れた。


シュナイゼルを前に、呼び出された当主達が礼をとり頭を下げている。


「皆、頭を上げよ」


シュナイゼルの言葉に、呼び出された当主達は顔を上げてシュナイゼルを見た。


「さて、今日急ぎで呼び出したのはそれなりの要件あっての事だ。事はお前達の父が企てた謀反である」


シュナイゼルの言葉に呼び出された当主達は寝耳に水と言う程に驚いた。


自分達の知らない所で父が謀反とはどう言う事なのかと。


シュナイゼルの話に当主達は顔を青くした。


ムツキ様への謀反、その内容がシュナイゼル陛下の娘、エレノア様に暴行を加えて自分達の都合のいい嫁を押し付けるなどと言うふざけた内容である。


普通であれば、家が取潰しどころか、一族死罪でもおかしくない内容である。


「この話を聞いて、お前達がどう動くか、それによってムツキ様への忠誠を見せる事を願う」


シュナイゼルとしても、半分の貴族を全員処刑しては国が成り立たなくなるのは目に見えている。


なので、当主達に自らの手で汚名を濯ぐチャンスを与えたのだ。


この言葉を正しく理解し、この事件を企てた老害といえる貴族が自らの息子達の手によって捕らえられ、城の広場に罪人として集められる事となる。


縛り上げられ、集められた者達が死刑になる直前、この貴族達の口から、さらなる事実が恨み言として語られるのであった。

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