第111話 飛んで火に入る?

シュナイゼルは馬車を急がせてエクリアまで戻ってきた。


予定より早い帰りに驚いている者もいたが、そんな事は関係なかった。


すぐにカインを呼び出して事情を説明する。


「なるほど、馬鹿な行動を起こす奴もいたもんだ」


話を聞いたカインはため息を吐きながらそう答えた。

部屋には手足を縛られ猿轡をかまされた男が3人転がされている。


「ああ。まだしっかりとした訳ではないから誰が関わっているかは分からないが、アレを唆した輩がいるだろうな」


「既成事実を作れば自分のモノになる。そんな前時代的な考えでの行動が許される訳がない」


前時代的。


昔の貴族は気に入った女を手に入れる為に夜這いなど無茶な行動をしでかす者もいた。


今よりも女性が政治の道具として使われ、傷物になって価値がなくなるなるよりは繋がりを作った方がいいと判断された様な時代だ。


それでも自分より身分が下の者に限る。


身分が上の家の娘に手を出して怒りを買うわけにはいかないだろう。


道具になることを嫌って、舞踏会で惚れた男と既成事実を作って男が打首、そして娘は家の恥と幽閉されて生涯を過ごした事例もあったそうだ。


そんな時代の話を持ち出してそそのかすなど相当な年寄りかバカだろう。


「王の娘を襲っておいて罪が許され結婚できる等戯言にしても酷すぎるな」


「ああ。これはムツキに迷惑をかけた以前に私の娘に手を出したバカどもを徹底的に締め上げるぞ」


シュナイゼルの怒りに応えるようにカインが頷いた所で部屋がノックされた。



シュナイゼルが返事をする前にドアが開いて人が入ってきた。


「お父様、お早い帰りですのね、何かありましたの?」


入ってきたのはロザリィであった。


返事を聞く前に入ってきたロザリィを、シュナイゼルは咎めようとするのだがその前に状況が変わった。


「な、なんで貴方がこんなとこにいるんですの!」


ロザリィは反射的にロウゲスを見てそう反応してしまった。


ロザリィとしては、シュナイゼルが帰ってきた事で作戦は成功している前提で、エレノアの代わりに自分の事をアピールしようと思ってここへ訪れたのだ。


「ロザリィ、この男を知っているのか?」


「えっと、それは……」


ロザリィは視線を宙に彷徨わせ、あからさまに動揺して言い訳を考えていた。


「ロザリィ、嘘を付いてはいけないよ。事と場合によっては私はロザリィに罰を与えなければいけなくなる。正直に話せば、まだ罪を軽くする事もできるかも知れないからね」


シュナイゼルの言葉に、ロザリィは自身の保身に走った。


ロウゲスを尋問する必要もなく、ロザリィの口から事件の全容が語られる事になるのであった。



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