第113話 処刑

シュナイゼルは、形式とは言え、無表情に徹する事に必死であった。


自身の前に今回の事件を企てた老害どもが手足を縛って並べられ、その息子、貴族の当主達によって首を刎ねらる直前であった。


猿轡をしていないので、申開きやシュナイゼルへ向かっての恨み言を言いたい放題である。


その言葉を聞いて、やはり老害なのだと確信が持てる。


売国奴やら自分達が居なければ国は終わりだ等と叫んでいるが、コイツらは自分達の今しか見えていない。


これから10年20年の話ではなく、シュナイゼルが死んだ後、次の世代、その次の世代へのこの国の発展を考えれば、ムツキの傘下に降り、ムツキの家で触れた技術を教えてもらって発展していかねばならない。


自分達が私腹を肥やす近い未来の話だけではいけないのだ。


シュナイゼルがそんな事を考えていると、老害の1人が、とんでもない言葉を口走った。


「予定さえ崩れなければなんとかなったのだ。もっと強い呪いの効果でエリザベートが死んでバーバラさえ正妃になっていれば!」


それを口走ったのはバーバラの生家、父親であった。


「グリンドン、どう言う事だ?」


「ふん、私は娘を王妃にして権力を手に入れる為になんでもやって来た。あの小娘を排除できると言うから高い金を払ったと言うのに!」


「それは、バーバラも知っているのか?」


「知るわけがない、非常になりきれぬ欠陥品の娘を王妃にする為に俺がどれほど苦労した事か! おい、バリトン、シュナイゼルを殺せ!王太子も殺して我が家が王位を掴み取るのだ!」


喚くグリンドンの言葉に「そうか」と言って目を瞑った。


再び開いた時、王の衣では隠しきれない怒りがシュナイゼルを支配していた。


「バリトン伯爵、お前の役目を俺に譲れ!こやつは私が叩き切る!」


グリンドンの息子、バリトンから剣を奪い取るとシュナイゼルはグリンドンの首を切り飛ばした。


目の前で起こった惨状に周りで喚いていた老害どもが狼狽えている。


「聞くに耐えない、やれ」


シュナイゼルの号令と共に、当主達は自分の親を処刑した。


謀反を働いた親を殺す事でムツキに対しての忠誠を示した。


「これで、ムツキが許してくれればいいのだがな」


シュナイゼルの言葉が死刑場に静かに響いた。


王としての言葉を口にしながらも、己が殺したグリンドンへの怒りが鎮まることはなかった。





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