第107話 暗躍
男は、馬車を乗り継いでバンヤンハイへとやって来た。
男の名はロウゲス・オスカールと言う。
今代の王女を嫁に貰うと言われてきた為、男爵家の生まれながらも周りよりも好待遇に育てられ、自尊心が強く育った。
それだけでなく、エレノアと面と向かってあった事は無いのだが、式典などで遠くから見て、将来、自分のモノになるのだと思いを募らせてきた。
エレノアとの婚約が無くなった後も、募らせた想いは拗れており、うさを晴らす為に娼館に入り浸っていた。
そこに、自分の上の世代。引退したとはいえ国を動かしていた重鎮達が、エレノアを手に入れる方法を教えてくれたのである。
無理矢理にでも既成事実さえ作れば自分のモノになる。
女などそんなモノだ。
過去に初夜に既に姦淫していた事が発覚して追放された女がいた。
など、唆されてその気にしたロウゲスは、エレノアをモノにする為にこの町までやってきた。
例の平民が、この町に住む事になり、エレノアもこの町に住む事になったと聞いてこの町までやって来た。
王都から出てくれたのはラッキーだった。
王都は貴族も多い為、兵士の数も多いが、この町はそうでもない。
平民に嫁ぐという事でエレノアに護衛もついていないようだ。
後は路地裏でもなんでも連れ込んで犯してしまえばいい。
自分の配下を連れて来るのはあれだった為、協力者を雇ってきた。
あの平民は生意気にもあと2人も婚約者がいるらしく、その2人を与えてやれば満足するだろう。
婚約者をぐちゃぐちゃにされてあの平民がどんな反応をするか楽しみだ。
ふふ、これは制裁なのだ。
平民がでしゃばった罰だ。
どれだけ力があろうとも、平民と貴族は住み分けなければならない。
尊き血が汚れてしまう。
平民が力を持てば蛮族なのだ。
すぐに正しき道にさらってやりますぞ、エレノア。
とは言えロウゲスはエレノアの行動を把握もしていないし、たった今この町に着いたばかり。
とりあえずは宿をとり、エレノアの情報を集めて行動を起こす場所も探さなければいけない。
宿の場所を聞いてそこに向かう途中に、ロウゲスは足を止めた。
運がいい。
ロウゲスは物陰に隠れて舌なめずりをした。
雇った男達を先に宿に向かわせて、1人別行動を開始する。
エレノアを見つけたのだ。
不用心にも女性3人で買い物に来ている様である。
残りの2人は平民の残りの妻だろう。
勿論、今手を出す様な真似はしない。
この後、どうやって追い詰めるのがいいか作戦を立ててからだ。
その為に、ロウゲスはエレノア達をストーキングして、情報を集めるのであった。
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