第105話 シュナイゼルの夢
「ムツキよ、本当に素晴らしいな」
ムツキとエレノア、シャーリー、アインが作った手料理を晩ごはんに振る舞った後、リビングにあるソファにムツキと並んで座ったシュナイゼルが飲み物のグラスを持ちながらムツキに言った。
向かいのソファで、シャーリーの父親のマルグリッド伯爵も同意だと深く頷いた。
エレノア達や、エリザベート、マルグリッド伯爵夫人はダイニングテーブルの方で話に花を咲かせている。
家の最新技術や居心地もさることながらと言った様子でシュナイゼルは飲み物を一口飲んで上機嫌で話をする。
「ムツキの夫婦仲が羨ましくおもうよ。 勿論、エリザベートに不満があるわけでは無いし、バーバラも愛している。 だからこそ、妻が仲良く料理を作り、ああやって仲良く食後にお茶をしている光景を羨ましいと思うのだ」
複数の妻がいる貴族で、妻同士が友達の様に仲良くする姿はまずない。
妻として、協力関係ではあっても、派閥の違うライバルであり、夫に気に入られて自分の派閥の利になるように揚げ足を取るような事も多かったりするからだ。
政治的な行動がついて回るのが貴族だ。
だからこそ、政治に関係のない平民を妾にして愛を求める貴族も多いのかもしれないが、シュナイゼルは妾を作らず、妻2人を大事に愛してきた。
3人の妻が仲良くお互いの為に過ごす光景を、とても羨ましく感じているのである。
「俺はな、ムツキ。いつか、エリザベートとバーバラが派閥や政治など関係なく、仲良くしてくれる事を目標にする。 派閥で自分達の利を求めるのではなく、国の為、貴族全体が派閥の垣根のない国を目指すぞ!」
思っていても、決して口にしなかったシュナイゼルの本音だ。
旅の疲れと楽しいこの空間にいつもよりも酔いがまわり、不意に出た本音であった。
「私も素晴らしいと思います。シュナイゼル王、いえ、シュナイゼルさん。私も貴方の家族として、そんな未来が実現できる様に力になりますぞ」
マルグリッド伯爵も、シュナイゼルの言葉を応援する。
酒の席の話だからなど、貴族の世界では関係ない。
他国の貴族が、こんな話を軽々しくする物ではない。
しかし、マルグリッド伯爵は、この空間だからこそ、本音を語ったシュナイゼルの夢を応援したいと思った。
この聞いた話も、ここだけの話と胸に秘めることだろう。
警護の必要もなく、気心の知れた家族だけの空間で、普段はここまでなる事はないシュナイゼルが酔って眠りにつくまで、楽しい時間は続くのであった。
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