第101話 朝
一夜が明けて、ムツキは、頬を叩く感触で目を覚ました。
ムツキが体を起こすと、目の前にピリカが腕を組んで仁王立ちの様子で飛んでいた。
『おはようございます。ピリカ』
『おはよう、ムツキ。ムツキ、もうお昼前よ、お腹が空いたわ!』
ピリカの言葉を聞いて、ムツキは飛び起きた。
「え、お昼ですか! みなさんはどうしてますか?」
ついつい言葉に出てしまったムツキの言葉に、ピリカは首を傾げながら答えた。
『貴方の奥さんもみんな寝てるわよ?』
ムツキは少しホッとした。自分だけが寝坊したわけではなかった。
皆が寝坊してしまうくらいに、このベッドの寝心地が良かったからだろう。
『早くご飯にしましょうよ!』
ムツキはピリカに急かされてベッドから降りて着替えを済ませてリビングへと向かう。
ピリカも、妖精と言う事で魔力だけで食事の必要はなく、これまでは食事をせずに生きてきたのだが、ムツキと共に過ごす様になってムツキが食べている食べ物に興味を持ち、ムツキの物を分けでもらった事がある。
それ以降、味覚と言う物の素晴らしさを知ったらしく、食べ物。特にムツキの作る食べ物に夢中である。
リビングからキッチンで水を飲むと、ムツキはエレノア達を起こす前にご飯を作ってしまおうと決めた。
お昼前だが、みんな寝起きなため、朝食の為に昨日の晩に用意しておいた物にする。
冷蔵庫の中から、よく冷えたバットを取り出してアイランドキッチンに置いた。
バットの中身は、甘い砂糖と濃厚なミルクで作った卵液をしっかりと吸い込んだパンがヒタヒタの状態で並んでいた。
後は、これをバターでこんがりきつね色に焼き上げれば完成である。
付け合わせは程よい
これは、風魔法でミルクとジャガイモをミキシングした手抜きスープに塩とコショウ。そして錬金術でコンソメスープをキューブ化した物を砕いて入れて味を整えた物だが、舌触りのいいちゃんとしたポタージュになっている。
テーブルに人数分の食事を用意した頃には、リビングダイニングには甘い香りが充満していた。
『ムツキ、早く起こして食べましょう!』
ピリカは我慢できないのか、自分の力では動かせないムツキの背中を一生懸命押す。
ムツキはその行動を微笑ましく思いながらエレノア達を起こしに向かう。
ムツキに起こされて、慌てて飛び起きる妻達の様子もとても可愛いと思ってしまうが、それを口に出すのは踏みとどまったムツキであった。
そんな様子も、食事を始めて甘いフレンチトーストを一口食べればどうでも良くなってしまう。
エレノア達はとろける甘さに頬を押さえ、ムツキの皿からは驚くべきスピードで一枚のフレンチトーストが無くなっていく。
幸せな光景に微笑んで、ムツキも自分の分をナイフとフォークで切り分けて口に運ぶのだった。
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