第100話 ベッド

トイレの騒動がおさまり、ムツキはやっと眠りにつくに至った。


そのムツキが眠る部屋とは別の部屋では、3人の少女が眠れずに話が盛り上がっていた。


婚前のマナーとして、ムツキはエレノア達と一緒に寝る事はない為、この話に巻き込まれる事はなかった。


トイレやお風呂もさることながら、彼女達の今の話題はベッドに敷かれたマットレスであった。


ベッドは木製のオシャレなローベットと言われる物で、この世界にはないスタイルのベッドである。


マットレスよりも迫り出した木製部分も、マットレスを背もたれに腰掛けるには丁度いい作りであった。


そしてマットレス。


ムツキの好みでコイル式のマットレスである。


体に合わせて沈み込み、無理のない体勢で体を支えてくれるこの世界にはない作りのものであった。


「これもムツキ様の世界の技術。初代聖王が母国に恋焦がれたと言うのも今日この家で過ごした時間だけでも分かりますね」


シャーリーが、マットレスに大の字で寝転んだ状態で話した。


エクリア城にある高級ベッドと比べても寝心地はとてつもなくいい。


「旦那様の作る物はどれもとても凄い! ニコラスから聞いていた人の暮らしとも全然違うし、エルフの私からすればどれも素晴らしい物で毎日がとても楽しみになる。今も、明日の朝食が楽しみだ」


アインは今日の晩御飯の味を思い出したのか、今にもよだれが垂れそうなほど顔が緩んでいる。


アインは森な生活であった為、人の生活とこの家の生活を比べる事もできないのだ。


今後、普通を知った時は大変そうである。


「確かにムツキ様の作る朝食も気になりますが、それよりもこの家のとんでもなさですよ、ねえ、シャーリーさん」


エレノアがシャーリーに話しかけるが、返事は返ってこない。


「シャーリーさん?」


エレノアがベッドの上のシャーリーを見ると、スゥスゥと寝息を立てていた。


「そりゃ、このベッドならすぐに寝てしまいますよね」


このベットの上でパジャマパーティーをしようと思ったのが無謀であった。


気持ちよさそうに寝ているシャーリーを見ていると、エレノアもかわいい欠伸が出てきてしまった。


「アインさん、私達もそろそろ寝ますか?」


「そうだな、私ももう眠気に勝てそうにない」


アインも目をシパシパさせて眠たそうである。


本当は、もっとムツキについての恋バナなどたくさん話したかった所だが、これからの生活ではこうやってみんなで過ごす事が増えるだろう。


楽しみは後々にとっておく事にして、心地よい空の様なベッドに体を預け、エレノアもアインも夢の中に落ちていくのであった。

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