第98話 内装2
食事の後は、夫婦団欒の時間である。
その前に、エレノアやシャーリーが食器を洗おうとしてくれたのだが、それもムツキの現代家電風魔道具の力で解決であった。
食洗機。
食器を放り込んでスイッチを押すだけで自動で食器を洗ってくれるのである。
「この家の道具は、人を怠け者にしますわ」
食後のおやつにテーブルに置かれたクッキーを一つ齧りながら、エレノアが話した。
「はい。あの道具があれば料理人は下積みの一部を飛ばせますね」
シャーリーも紅茶を一口飲んで感心の声を漏らした。
「だけど、道具に任せられない事もありますよ。シャーリーじゃないと、こんなに美味しい紅茶は淹れられません」
ムツキはそう言ってシャーリーを褒めた。
勿論、他のメイドでも美味しい紅茶は淹れられるだろうが、今はそんな無粋な事を言わなくてもいいだろう。
「旦那様、他にはどんな道具があるのですか?」
クッキーの甘さに目を輝かせていたアインが、口の中の物を飲み込んだ後にムツキに質問した。
「そうだな。再現できなかった物も沢山あるけど……」
テレビなどは、放送電波のない異世界では無理だ。
しかし、やはりビックリさせるものは物語の定番で決まっている。
「トイレは凄いよ。それに、お風呂はこだわって大きくしたかな」
トイレは、異世界でのドッキリ?の定番の洋式水栓トイレと、温水便座である。
そして風呂は天然温泉掛け流しである。
この森は裏がペトレの住む山があるが、あれは火山である。
なので掘れば温泉は湧くのだ。
そして憧れの檜風呂。
錬金術の力で抗菌防カビ対策もばっちりである。
勿論、目隠しを作って露天風呂も用意してある。
ただ、露天風呂を妻達に使わせるかは悩みどころだ。
この世界ではスキルによって覗きができるかもしれない。
自分以外にはみせたくないのである。
「トイレと、お風呂?」
トイレは勿論アインも知っている。しかしエルフは川で水浴びする文化で風呂を知らなかった。
エクリア城も、風呂ではなく布で拭ぐったりする事がメインであった為、今だに風呂を知らなかった。
「ムツキ様、お風呂があるのですか!」
歓喜の声を上げたのは、シャーリーであった。
ドラゴニアは明治の日本人が作った国の為、貴族の家には風呂が必ずある。
シャーリーは、エクリアで過ごす間は、我慢を強いられできたのだ。喜ばないわけがない。
「たしかドラゴニア名物の。そんなにいいものなのですか? シャーリーさん」
エレノアの質問にシャーリーは激しく頷いている。
「それじゃ、先にお風呂を見に行ってみようか」
ムツキの提案に、みんなで風呂に移動する。
「こ、こんなに大きなお風呂が……」
シャーリーは目を輝かせて絶句してしまった。
「旦那様、ここはいい。森の香りがする」
アインは木の香りのする風呂が気に入った様である。
「こんな大きなお風呂、4人で入れますね。流石に今日は無理でしょうが、きちんと式を挙げたあかつきには、みんなで、ムツキ様といっしょに、裸で……」
エレノアはゴニョゴニョと小さな声で言っているが、ステータスの高いムツキには聞こえてしまう。
ムツキは苦笑いながらも、空気を読んで口を噤んだ。
3人とも妻と言っているが、まだ婚約者と言う事になっている。
婚前交渉はタブーである。
将来は仲良く入る様になるのかもしれないが、今はまだ、別々に入る事になる。
その日の晩は、広いお風呂をムツキは独り占めしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます