第95話 外壁
翌日になってしまったが、ムツキはエレノア達を連れて森に建てた家へとやって来た。
「これを数日間でなんて、流石ですわ、ムツキ様!」
「凄い。低い家なのに今まで見たどの家よりも立派に感じます」
平屋の日本家屋風を、エレノアとシャーリーは驚いた様子で見ている。
ムツキの発想が斬新と思っているのだが、ムツキとしては、大河ドラマなどで見て少し憧れていたから日本家屋にしたと言うだけである。
ただ、アインは少し不安な事がある様であった。
「旦那様、こうも窓が開いていては警備が大変ではないのか?」
エルフは防衛の観点からツリーハウスが主流である。
防衛の視点から見れば、日本家屋の平屋の城は開放感が溢れるほど、座敷が丸見えであり、縁側等は、窓の外であった。
アインの言葉にシャーリーも確かにと相槌を打った。
シャーリーは騎士であったが指揮官ではなかったし、配属として警備の任にはついていなかったので言われるまで警備まで気が回らなかった。
しかし、その事で気が弛んでいたと、シャーリーは己の気を引き締めた。
確かに、ムツキの感覚的に日本家屋をイメージして作っている為、今日本で主流の家と言うよりは昔の掃き出しのいい大きな窓ガラスが並ぶ空間の広い家である。
治安いい日本だからこそこれで問題ないが、治安の悪い国ならすぐにガラスを破られて泥棒や、強盗、強姦等の犯罪に巻き込まれるだろう。
実際、元の世界では、日本以外の国では、こじ開けて盗まれると言う理由で自動販売機を開けない国も沢山ある。
勿論、この世界の方が治安は悪い。
人も貧富の差がまだまだ激しい地域はあるし、何より魔物や魔者が居る。
しかし、その辺りのことはムツキも考えてある。
日本家屋の側には今風のガルバリウムでできた大きな家も建っている。
この家はシュナイゼルとアグニールが後から送ってくれる事になっている護衛やメイド達の家だ。日本で言えば離れだろうか。
それに、ガラスもただのガラスではない。
錬金術で作った特製のガラスである。
そもそも家は全てにおいて特別製である。
ムツキは今もなおマルチによってスキルを取得し続けている。
錬金術もレベルが上がり、作る物にプラスαの付加効果をつける事ができる様になっている。
つまり、バフである。
日本家屋は木製で、火をつけられればすぐに燃えてしまう。
趣があり、立派であるが、その脆弱性は見ての通りだ。
せめて日本の城の様に石垣で高さを出したり、漆喰を壁に塗って耐火性を上げればまだマシかも知れないが、ムツキはその辺りを無視して平屋で立派な日本家屋作っている。
ただ、その使われる素材にはスキルと魔力の暴力によって、対打撃、対射撃、耐火性は勿論な事、耐衝撃性など考えられるバフを乗せた素材で構成されている為、余程の強者でなければ傷一つつけられないだろう。
もし強者が来るのなら、ボロネが気づいて知らせに来るだろう。
その為の離着陸場を確保してあるのだから。
ムツキは安全面が完璧な事を説明して、試しに鉄の棒を渡して殴らせたり、火をつけてみたりして、実演までやって見せる。
その後は、日本の文明の力が詰め込まれた内装を説明する為に入り口へと向かうのであった。
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