第89話 新たなる
戦争?に幕が降りたのだが、そうなった後に、一つ問題が持ち上がった。
それは、ナーラの一言から始まった。
「ペトレから聞いておるぞ、傘下に入ったら主上に番を献上するのじゃろう?」
番。勿論嫁の事であろうが、ペトレは姉になんでも話してしまう性格のようである。
ムツキの中で、ドラゴニアを守護する威厳あるドラゴンのイメージは無くなっていた。
「番ですか。私共エルフには番を作ると言う習慣が無いのですが……」
「私共ドワーフもです。人族の様に限られた寿命と言う意識がありませんので……」
人とは違い長い時を生きるエルフとドワーフは、決まった夫婦になって余生を共に過ごすと言う感覚が無い。
集団の中の個として生き、その時のに気の合う者同士が共に過ごす。
子孫は長い人生の中で、その時のパートナーの子供を産む事もある。と言った様子で、種族として子供を育てるので母や子と言った感覚も薄かった。
「人と時間の流れが違う種族には難しくないのか?」
バインミィがそう提案するも、手を挙げる者が居た。
「私が行きましょう」
エルフのイニーナである。
「私は、人の生活に興味があります。人の番にも興味があります」
イニーナは、ニコラスと同時期に架け橋になる選択を迫られたエルフの1人であったが、ニコラスが我先に手を挙げた為に結局は架け橋にならなかったエルフであった。
その後、エルフの騎士としてエルフを取りまとめる立場まで上がったが、里帰りして来るたびに外の世界の話をするニコラスの話を聞いて、あの時に興味があったにも関わらず手を挙げなかった自分の選択を後悔していた。
「私は、人の生活に触れる為に、ムツキ様の番になります!」
イニーナの目は、己の端中心にキラキラと輝いていた。
エルフのリーダーのハジは、この目を知っていた。
手がつけられ無くなった時のニコラスと同じ目なのである。
「分かりました。エルフは、イニーナに任せる事にしましょう」
「うむ、そうなるとドワーフも出さないわけには……」
「いや、無理に出さなくてもいいですから!」
このままだとどんどん話が進んでいき、芋蔓式に嫁が増えていきそうである。
ボロネの話を聞けば、ドラゴンもベヘモスもまだまだ居る様だし、今まで会えば傘下に入れてくれと言って来る。
ムツキの拒否に、ドワーフ達は納得してただ傘下に入るだけになったのだが、エルフ側は、イニーナが寂しそうな顔をするのを見て、自ら申し出たイニーナだけ、番に貰う様にハジから説得されるムツキなのであった。
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