第88話 原因

ナーラに乗ったムツキ達が、とある場所にたどり着くまで、一切の攻撃は受けなかった。


そしてたどり着いたのは、ベヘモスが一体住まう山であった。


そして、ベヘモスは、ナーラが山に降り立った時、いつぞやのボロネの様に、土下座の様に頭を地面に擦り付けて待っていたのである。

そして、ベヘモスの隣には、ベヘモスと同様に土下座をする小柄なエルフの様な姿をがみえる。


「バインミィ、なぜその様な?」


ナーラの言葉であった。


ナーラとしては、戦を仕掛けて来た側がこの様な姿で待ってりのは不思議な事である。


降伏するにしても、先に降伏宣言などしてベヘモス側から動くものだと思ったからだ。


ナーラにバインミィと呼ばれたベヘモスは、ゆっくりと頭を上げた。


ベヘモス、ムツキの世界の話だと、バハムートと同一視されて竜の姿であったり、ベヒーモスとして、竜とは別物としてケモノの姿をであったりするが、この世界のベヘモスは牛に近いケモノの姿をしている。


ベヘモスは頭を上げると、話し始めた。


「まず、俺達には戦争の意思はない。ワーウルフ達の暴走だ」


ベヘモスの話は、言い訳の様であった。


ベヘモスの慌てる姿を見て、隣にいた小柄なエルフの1人が手を挙げて意思表示をした。


「うぬ、ドワーフも何かあるか?」


小柄なエルフはドワーフであった。


ムツキの想像とは違い、子供のままのエルフである。

ドワーフと言えば、ずんぐりむっくりな老人の姿、女性でも髭が生えているといった姿を想像してしまうが、この世界のドワーフは、ただのエルフの人種違いの様である。


「私から詳しく説明してもよろしいでしょうか?」


このドワーフはドワーフ族のリーダーなのだそうだ。エルフの里のハジと同じ立場である。


そして、ドワーフの話す真相に、ムツキの顔は、どんどん苦笑いに変わっていく。


どうやら、ワーウルフが暴走をしてエルフの領土に攻め込もうとしたのには原因があるのだそうだ。


それは、ワーウルフが食料を取っていた森に、数ヶ月前、無数の隕石が落ちた影響によって力量不足以前に更地に変わってしまったのだと言う。


ドワーフ達はまだ作物を作って生活していた為、森の恵みが無くなっても生活できていたが、肉食のワーウルフにとって、森の動物や魔物が居なくなってしまった事は死活問題であった。


食うのにも困ったワーウルフ達は、ベヘモスやドワーフの言う事も聞かずに、豊かな自然が残るエルフの森の略奪に乗り出したのだ。


それが、今回のワーウルフ達の暴走の真相だ。


ムツキは、それを聞いて冷や汗をかきながら頭を下げた。


「すいませんでした!」


ムツキの行動に、ムツキ以外の全員が驚いた。


隕石だと思われる物は、多分ムツキの魔法である。


ムツキはレベルを上げる為、人の生存圏以外で魔法をぶちかました過去がある。


その事を説明して、ムツキは謝罪した。


怒っても仕方がない。ムツキはそう思ったが、ベヘモスやドワーフの反応は違った物であった。


「強者の行動に、意見を言うのはおかしな事だ」


ベヘモスやドワーフの考え方は、弱肉強食がベースになっている。


ムツキは強者のとして、森の命を奪った。それは、命を無駄にする行為ではなく、魂を取り込んで己の力とする行為である。


それは、食事と同じであるのだそうだ。


間違っていたのはワーウルフ達の方であった。


力ある物から奪うのではなく、傅いて傘下に降り、食糧を分けてもらうなどの対応が必要だったのだ。


今まではドラゴンのナーラとベヘモスのバインミィの力が拮抗していたが故に、領土が分かれており、その領土に住む種族がエルフとドワーフにわかれ、そしてワーウルフや人が住んでいる状況であった。


しかし、今回圧倒的な存在が表せた事で、ナーラとバインミィの領土は統合される事になる。


ムツキの領土として。


何かが変わるわけではないが、全員がムツキの傘下として、手を取り合う様になるのだ。


ムツキとしては、ワーウルフ達に申し訳なく思うのだが、この問題は、バインミィとドワーフ達が、ムツキの傘下に入ると言う事で、終わりを迎えるのであった。


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