第87話 出発!

ムツキがピリカに手伝って貰って事を納め、エルフの里に帰ってくると、里では長ともう1人のエルフが待っていた。


「ムツキ様、ありがとうございました」


「ありがとうございました」


2人がお礼を言って来たので、ムツキは返事を返しながら、チラリと長とは違うエルフを見た。


「お初にお目にかかりますムツキ様、私はこの里の代表のハジと申します」


「え、代表は長さんでは?」


里の代表。長が代表だと思っていたムツキは、素直にそう質問した。


長とハジは、2人でそれを否定して、理由を教えてくれた。


ムツキがオサと聞いて、村長だと思っていたのは間違いで、エルフは生まれた順番にちなんだ名前がつけられるそうだ。


つまり、オサ03と、ハジ01(ハジマリ)であり、ハジが里の始まりの1人と言う認識なのだそうだ。


ちなみに、ニコラスは架け橋になった時に名前が変わったのだそう。


説明を聞いて、ムツキは成程と納得した。


いや、するほかなかったのだが。


そうしていると、ナーラが里へ飛んでやって来た。


「主上、先程の魔力の爆発は恐怖を覚えるほどでした。ワーウルフを倒してくださってありがとうございます」


ナーラは感謝を述べるが、それだけでは終わらなかった。


「多分ですが、ワーウルフが全滅して終わりではないでしょう。事を起こしたのですから、ベヘモスも出てくるでしょうし、ドワーフ達がどう出るかも気になります」


ワーウルフ5000はとりあえず全滅させたのだが、攻めてきていたワーウルフが5000なだけで、種族としてはまだ多くいる訳だし、ベヘモスやドワーフ達の行動もわからないし、どうして急にワーウルフ達が攻めて来たのかは分かっていない。


一撃で5000を消し飛ばしたのを見て、退いていく可能性もあるし、理由によってはまだ攻めてくる可能性もある。


「主上、相手の出方を伺って後手に回るよりも、こちらから攻める、訳ではないですが、なぜ攻めて来たのかを聞きに行き、必要とあらば停戦協定を提案しても良いでしょう」


ムツキとしても、その提案は有りであった。


いつまた攻めて来るかわからず、エルフの里に拘束されるよりも、こちらから出向いて終わらせた方が早く終わるからだ。


そうと決まれば善は急げだ。


向こうに向かうのは、ムツキとピリカ、ハジ、そしてハジの護衛としてイニーナが。そしてナーラの計5人(体)で行く事になった。


この人数ではナーラに乗って行く事ができるので、ムツキはナーラに相談する。



ナーラは、主上と崇めるムツキ以外のエルフを背中に乗せるのに難色を示したが、結局はムツキのお願いなので渋々了承した。


そして、ナーラの背中に3人乗って、ピリカはムツキの肩にしがみつき、ひとっ飛びしてベヘモスの領域に向かうのであった。

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