第47話白の竜

ムツキが通された階段の先、岩山の上には青白いドラゴンが頭を下げて待っていた。


隣にはボロネがいる事から、このドラゴンがペトレだろう。


「な、ペトレ様、何を?」


ドラゴニア王がそう問いかけるも、ペトレは言葉を発さず、頭を下げたままだ。


「ムツキ、ペトレに言葉を発する事を許すと言わないとペトレはこのままです」


「な!」


ボロネの言葉にドラゴニア王は絶句してしまった。

絶対的な力だと思ってるいたペトレが訪ねて来た人間に伺いを立てている事が信じられなかった。


ムツキもまた、驚いていた。

国を守護するドラゴンがこんな対応をするとは思っていなかったからだ。


「許す」


とりあえず話しが進まないのでムツキはそう言葉を発した。


「ムツキ様、話は先程ボロネから軽く伺いました。私、そしてドラゴニアをムツキ様の配下に加えたいとか」


「な、なにを…」


この国の王であるドラゴニア王はその言葉に言葉を挟もうとするが、ペトレの一睨みで口を閉じた。


「まあ、話しが早くて助かりますけどね。

私はこのエレノアと婚約したんですけど、周りの貴族が鬱陶しいみたいなんですよ。

だからエクリアを私の下に付けるって話しがシュナイゼルから出ましてね。

だけどそれだけじゃ変な事する貴族は減らないじゃないですか。

だからボロネとペトレを傘下に入れればわかりやすい抑止力になるでしょ?」


「貴様!ペトレ様になんて事を!」


「ほら、こう言うのです。なぜシュナイゼル王が私の下に付くと言ったか理解できない。

ペトレが私に敬語を使うか理解できない人は居るのです。

でも、流石にペトレとドラゴニア聖国が声明を出せば他の国は黙ると思うんですよね。国王は普通賢いでしょう?」


案に馬鹿だと言われたドラゴニア王は顔を赤くする。


これは、他国と比べ、長らくトップに君臨し続け、自分より上の人間は居ないと思って来たドラゴニア王だからこその怒りであった。


多分、他の国の国王であれば、ペトレを傘下に入れたと言う事実だけで、ドラゴンより強いのだと理解して、自国を守る為の行動を取るだろう。


今まで、ドラゴニアに戦争を仕掛けなかったのと同じ事だ。


「アグニール。私はムツキと敵対するのならばいくらサスケの子孫であろうともお前達と敵対するだろう。

それ程までに、このムツキの力は圧倒的なのだ」


ペトレの言葉は、それだけでドラゴニア王の心を折ったようだった。


「それ程までなのですか?」


「私など、一撃。そしてドラゴニア、いや、人を滅ぼすのも一瞬だろうな」


ドラゴニア王は、今の状況を理解したのか、ゆっくりとムツキの方を見た。


ムツキは、ニコリと笑って会釈するのだが、それに対するドラゴニア王の反応は恐る様に「ヒッ」と声をあげた。



「アグニールよ、お主もムツキに嫁を用意しろ。勿論、ムツキの妃と喧嘩せぬ、一歩引いて考えられる賢き者をだ」


「ええ?」


ペトレの提案にムツキは驚きの声を上げる。


一夫多妻、王政の事をあまり理解していなかったムツキにとって、予想外の事が起ころうとしていた。

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