第41話提案
「ムツキよ、お前とエレノアの婚姻に口を挟む貴族を黙らせる為の提案を聞いてくれないだろうか?」
ムツキはシュナイゼルの改まった話し方にコクリと頷いた。
「ムツキ、私はお前の実力を甘く見ていた。
お前は私が想像するよりもずっと凄かったのだな」
「そんな事は」
謙遜するムツキにシュナイゼルは首を振った。
「ドラゴンを跪かせるとはそう言う事なのだ。
実際、勇者の作った国、ドラゴニア聖国は未だ続くドラゴンの加護に周囲の国が手を出す事はない」
シュナイゼルの話をムツキはじっと聞いている。
エリザベートとエレノアも、シュナイゼルが真剣に話し始めてからは、先ほどの和気藹々とした雰囲気ではなく、真剣な表情だ。
大事な話だと、理解しているのだろう。
「ムツキよ、我が国をムツキの傘下に入れてもらえないだろうか?」
「なっ!」
「対等ではなく、我々が下なのだ。
悪い言い方になってしまうが、我が国はエレノアを差し出したのだ」
ムツキは驚きが隠せない。どうしてそんな話になるのか。
「私はこの国の王としてこの国を守る必要がある。ムツキはこの国を滅ぼす事ができる存在。
国同士の小競り合いの様にどちらが勝つか分からないのでは無く、ムツキの方が上なのだ
だから、我が国を傘下に入れ、そしてその事を我が国の貴族に発表させて欲しい」
ムツキは、考えをまとめる為少し時間を空けた後、ゆっくりと話し出した。
「本当にそれで貴族がおさまりますか?
信じずに暴走する貴族も出てくるでしょう」
「発表さえしていれば、その貴族を反逆罪で裁く事ができる。
今のままであればムツキはただの平民。
例えば私が爵位を与えようとも騎士か男爵だ。それだと貴族は茶々を入れやすいが、国がムツキの加護下に入ったとなれば、ムツキに手を出すのは国を滅ぼす反逆罪だ。だから、下手に動く貴族は少なくなるし、動いたとしてもこちらで対処ができる」
「分かりました。だけど、私の傘下に入った所で効果は薄いですよ。ドラゴンみたいに象徴になっているわけではないのですから」
ムツキはシュナイゼルの提案を受け入れる事にした。
貴族になるつもりはなかったが、まさかこうなるとは思わなかった。
シュナイゼルがきちんとしてくれれば、貴族は抑える事ができるだろう。
もし、シュナイゼルをすり抜けてこちらにやって来てムツキが手を下しても問題がなくなる。
「大丈夫だ。将来ムツキは必ず偉人になるだろう」
「やめてくださいよ。縁起でもない」
ムツキとシュナイゼルは合意の握手を交わすのだった。
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