第40話 ブロンソン派閥

「こんなのおかしいですわ!」


王宮メイドとしての修行から実家に帰されたユーリネは父親に愚痴を言っていた。


「あの黒髪がオークを倒したなんて嘘に決まってますわ!みんな騙されているのですわ!」


ユーリエのヒートアップに父親であるムーヌ伯爵はタジタジであったが、派閥内で噂になっている事柄を思い出し、ユーリエに尋ねた。


「ユーリエ、その黒髪と言うのがエレノア様を助けた事になっているのだね?」


「そうですわ!あんなのよりも騎士様の方がガッチリして強そうですのに王様の圧力に負けて身を引いたのですわ!」


ユーリエがヤイヤイと喚いているが、断片的な情報から、見えてくることがあるとムーヌ伯爵は考えた。


察するにシュナイゼル王はその黒髪の男の事を気に入りエレノア様と結婚させて王家に迎え入れたかった様だ。


その為に騎士の功績を黒髪に与え、エレノア様を娶る為の実績を作ったと。


それによって蔑ろにされた私達の派閥は騒いでいる訳ですが、これはシュナイゼル王を問い詰める材料になりそうですな。


ブロンソン様に報告しなければ。


「お父様!聞いてますの?」


「お、おお、聞いているよ、ユーリエ」


ユーリエの愚痴はまだまだ収まりそうにない。

ムーヌ伯爵は次の日少し痩せていたとかいないとか。



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「ムーヌよ、それは誠か?」


「はい。娘が言う事をまとめ、盛った部分も考慮して推測しますとそうなるかと」


ブロンソン公爵派閥の貴族が集まる中、昨今の問題の原因が見つかったと言う話になり、ムーヌ伯爵が話終えた所だった。


問題とは、王族の娘。つまり王女を王妃と相対する派閥の貴族の嫁にすると言う取り決めを反故にされた事であった。


これは、国内でのいざこざを抑える為に昔から行われてきた習慣だった。


他国の姫が嫁に来るのと同じである。


人質と言った側面もあるのだ。

国内の対抗派閥同士が争って国力を落とさない為、国王はどちらの派閥に対しても平等だと言う証明なのだ。


それを反故にされれば、片方の派閥は国王に蔑ろにされたと同じであり、問題が起こる。


しかも、王女をあてがったのが平民とくれば尚更だ。


ブロンソン公爵派閥は、シュナイゼル王を問い詰める為に遅くまで話し合い、時期を見て行動に移すのだった。









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