第39話 シュナイゼル王の決意

ムツキから事の経緯を聞いたシュナイゼルは言葉が出てこない程に驚いた。

そして、腹心の部下であるカインに感謝した。


エレノアとムツキの婚約を取り決めた時にはカインが言う程、それも貴族のバランスを崩してでも王女を婚約者とする事を進める程なのだからとカインを信頼してムツキの取り込みに踏み切った。


しかし、シュナイゼルの中では、カインに次ぐもしくはカインと同等の実力を持つので他国に行かれては勿体無い。

程度の認識であった。

実際、ムツキがあの時にもう少しゴネていたり、エレノアがムツキに惚れていなければ話は無かったことにしてもいいと思っていた。

国力維持の為にエレノアはやはり貴族の誰かと。などと考えていたくらいだ。


カインは確かに強い。

しかしそれは単体戦力もさることながら、軍事戦術を用いた時のスキルが並外れているからこそ、その評価は何倍にも大きくなるからだ。

単体戦力で考えたならば、数の戦力や戦略によって抑える事は可能である。

それでも、エクリア帝国のカインと言えば他国から恐れられる名前だ。

1人で魔者を倒す猛者は各国を探してもそう多くはない。

だからこそ、他国に取られない様にムツキの取り込みを進めたのだと、そう考えていた。


しかし、ドラゴンを跪かせたとなれば話は別だ。

あの火山は入るだけで自殺行為だと言われるほどに強い魔物が闊歩している。

それは先日のオークなど軽く倒してしまう魔物だ。


基本、魔物の方が魔者よりも弱い。

これは人間の生活範囲での事である。

人が踏み入れる事ができない場所では、魔者を越える魔物は存在する。


所詮、人間が倒せる、領土を守れるギリギリの相手がオーク等の魔者と言うだけなのだ。


そして、人の範囲外の魔物の代表と言われるのがドラゴンだ。


今の人の生活があるのは、ドラゴンの加護があるからだと言われている。

過去、人の代の平和を築き上げたのが勇者と呼ばれる異世界から来た人間だった。


その勇者はドラゴンと盟約を結び、人の未来をドラゴンに託し、それを今もドラゴンが守っているから今の平和がある。


ドラゴニア聖国。勇者とドラゴンが作った国だが、あそこにはそのドラゴンが今だに居て、国を守っていると言われている。


そのドラゴンをムツキは跪かせ、命乞いとして竜石を差し出したのだと言う。

それは、ムツキの実力がドラゴンを凌ぐと言う事。

カインに国の総力を上げてドラゴンを討ち取れと命令したとして、できるかと言えば否だろう。


だとすれば、ムツキは単体で国を滅ぼすだけの力を持っていると言う事に他ならない。


シュナイゼルは、あの時の自分は英断だったと自分を褒めた。

これは、ムツキと縁を作るのではなく、ムツキの加護下に入る為の婚姻だ。


とりあえず、竜石が凄い物とだけ理解したエレノアが、嬉しそうにムツキの旅の話を質問している。

2人の中は良好の様だ。


国王として、貴族がどんな邪魔をして来ようともこの婚姻を成功させようと心に決めたのだった。




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