第38話 お茶会

「どうですか?お母様」


エレノアは、ムツキに褒めてもらった満面の笑顔でエリザベートに髪飾りを見せた。


「とてもよく似合っているわ。みた事がない造りだけど、とてもステキな髪飾りよ。

ムツキ君、今度お店を教えてくれる?私もこのお店の物を見てみたいわ」


「えっと、これはお店で買った物ではなく私が作った物ですので」


ムツキの言葉にエリザベートは驚き、エレノアはその言葉に髪飾りを嬉しそうに撫でた。


「本当に、ムツキ君が作ったの?」


「ええ。不味かったでしょうか?」


ムツキは、もしかしてこう言う事にも権利があり、許可なく作るのは犯罪だっただろうか?と内心ドキリとした。


「いえ、とても素晴らしい造りだったから。ムツキ君はこんな才能もあったのね」


「ありがとうございます」


ムツキはホッと胸を撫で下ろした。


「こんなに細かい細工を施せる細工師は見た事がないわ。この宝石も綺麗。なんて宝石かしら」


「ああ、それは________」


ムツキが話そうとしたタイミングで扉が開いて部屋に人が入ってきた。

この場にノックもせずに入れるとしたら1人である。

いや、入れるとしてもノックするのがマナーだろうが。


「ムツキ、すまないな。まだこちらの問題が解決できていなくてな」


シュナイゼル王は部屋に入るなり開口一番でそう話した。


「あ、はい」


ムツキはシュナイゼル王の勢いに反射で了承の回答をした。


シュナイゼル王は席に座ると、慣れた手つきでエリザベートがお茶を用意してシュナイゼル王の前に置いた。


「すまないな。エリザベート」


「いえ」


熟練の雰囲気を感じる。

シュナイゼル王はお茶を一口飲みながら、ある事に気づいた。


「エレノア、それは?」


「お父様、これはムツキ様に頂いたのです。しかもムツキ様の手作りなのですよ。

どうですか?素敵でしょう?」


シュナイゼル王はじっと髪飾りを見た後、カッと目を見開いた。


「あの、お父様?」


「ムツキよ、この石は、まさか…」


シュナイゼル王はわなわなと震えながらエレノアの言葉を無視してムツキに質問した。


「えっと、竜石と言うんですがご存じですか?」


「な、やはり、竜石なのか!ムツキよ、お前はドラゴンに会ったのか?」


シュナイゼル王の剣幕にエレノアは驚き、ムツキは背筋が伸び、エリザベートはシュナイゼル王の頬を摘んだ。


「あなた、落ち着いてくださいませ」


「いやしかし、ドラゴンだぞ!」


「落ち着かなければ話は進みませんよ」


「む、そうだな…」


エリザベートはシュナイゼル王の手綱を握るのがとても上手いようだ。


「ムツキよ。ドラゴンと会ったのだな?」


「はい。バンヤンハイの近くの火山の山頂で」


「ムツキよ、あそこに登ったのか?

それはなんと言うか…それで、竜石を手に入れた事は気づかれていないか?ドラゴンを怒らせていないだろうな?」


シュナイゼル王は鬼気迫る顔でムツキに質問した。


「いや、レットドラゴンから見逃してくださいといって差し出してきた物なので怒ってはないと思いますよ?」


ムツキの言葉にシュナイゼル王は開いた口が塞がらない程に驚いてしまった様だ。

エリザベートがお茶を渡し、喉を潤して少し落ち着くまで、部屋の中は無言の空間だった。


「ムツキよ、詳しく話してくれるか?」


シュナイゼル王は覚悟を決めてムツキに質問した。

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