第33話 下山

「え?」


「どうか、致しましたか?」


不意に漏れた疑問の言葉をレットドラゴンのボロネに訊ねられたがムツキはなんでもないとうやむやにした。


そうか。この場合、命を買ったって表現になるのか。マルチ、恐ろしい。


「もしかして、ドラゴンより強いなら最強だとか思っちゃってます?

ダメですよ。わたくしよりも強いドラゴンや他の種族も居るんですから」


ムツキは違う事を考えていたのだが、ボロネはそう忠告してきた。


「人間は狭い所で生きてますからね。そもそも食べませんから。

ドラゴンでも私なんかまだペーペーで、かつての勇者の相棒だったドラゴンは今や老体になってステータスは20万位ですし、他の老体のドラゴンもそれより低いものの15万位はザラです。一応、人の区分けで言えば私達は魔物、ドラゴンにも魔者が居ます。老体より更に成長して大きい身体に動きにくさを感じると人型を取る人体がそれに当たります。

そうなるとステータスは100万程にはなるんじゃないでしょうか?私は会った事が無いので詳しくは無いですけど。

その他にも人間の生活圏外にはベヘモス種やフェンリル種、フェニクス種なんかもいて、大体ドラゴンと同じ様な生態系ですよ。

人間はドラゴン、勇者の友人ぺトレの配下だと思われてるからこっちにやって来ないだけです。調子に乗ったら怪我では済まないですよ。

私みたいな青体のドラゴン位にしか勝てないですから」


ボロネは種族としては負けてないですからね。

とでも言いたそうに丁寧に説明してくれた。


ムツキとしては、そこまで血気盛んでは無い為、わざわざ挑みに行こうとは思わない。

一度旅はしてみたいと思っているので、その時に出会う事があれば素直に降参しよう。


自身は6万、相手が15万や20万、それ以上だと相手にもならない。


ボロネの忠告にお礼を言って、ムツキは火山を下山した。



_________________________________________


街に戻ってきたムツキは、とりあえず森の魔物は傭兵ギルドに下ろしてしまおうと考え、ギルドへ向かった。


「お兄さん、強いんですね。こんなに沢山!

傭兵じゃないから買取額が減っちゃうけど傭兵にはならないんですか?」


魔物の買取を頼んだ受付嬢が興味津々といった様子で聞いてきた。


「資格何も持ってませんし、今は自由が良いんですよ」


「あー。資格ないと傭兵はなれないですもんね。あ、こっからこっちはここで買い取るよりも肉屋に言った方が高く買い取ってくれます」


受付嬢は興味津々かと思いきや、世間話の様に見事に話をスルーして、業務の話を話した。

別に少し安くてもここで買い取ってもらってもいいのだが、ギルドの信頼的にこう言ってくれているのだろう。


ムツキは素直にありがとうと言って、買い取れる物は買い取ってもらい、傭兵ギルドを後にした。


勿論、受付嬢からスキル獲得のアナウンスは聞こえている。

今回は、格闘術だった。人は見かけによらない。



紹介してもらった肉屋に入った瞬間、ムツキは声をかけられた。


「あ、お兄さん、この間はありがとうございました」


「マール、お兄ちゃんが来てくれたわよ」


なんと、肉屋に居たのは、この間馬車で一緒になった親子であった。

なんでも、この店の奥さんと子供だそうで、先日は叔母の家に行っていた帰りだったそうだ。


マールと呼ばれた子供も、先日とは違い、酔いで気持ち悪くない為、元気に「こないだはありがとう」とお礼を言ってくれた。


ムツキは、元気な子供に少しホッコリしながら、要件である肉の買取をお願いした。


「ありがとうございます。これ、買取のお金です」


ムツキはお金を受け取る。

ピコン、スキル:痛いの痛いの飛んで行けをミリーから取得しました。


お、このスキルは偶に見るスキルだ。

どうやらマールはヤンチャな様で、怪我をしてはミリーにこれをしてもらっているのかな。


などと予想して家族の温かさに触れた様な気持ちになった。


店を出て、明日は手に入れた物をプレゼントに加工してくれる所を探さないとな。


そう考えながら、日が暮れてきた為に宿屋へと向かう。


今日は飯を食い損ねない様にしないとな。


そんな事を考えていたその時、


ピコン、スキル:痛いの痛いの飛んでいけが上限を超えた為、解呪にレベルアップしました。


「お?」

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