第8話 帝都の宿屋
帝国に入国してから数週間。
ムツキ達は帝都までやって来た。
この1ヶ月半ほど、立ち寄った町などでリフドンが物資を買い足しつつやって来たわけだが、今思うと、ここまで来るのに銀貨5枚は相当破格だったのでは無いかと心配してリフドンに話したのだが、リフドンは大笑いしながら「お前の塩胡椒のが破格だよ」と言った。
勿論出発の時点では分からなかった訳だが、リフドンは、栄養剤を持ち込んだ俺を王国に置いておくより、祖国である帝国に連れて行った方が利益があると考えていた様で。
それに、帝国について、研究の為に残りの栄養剤をある筋に流せば元を取るどころか大儲けだそうだ。
この旅で、旅の仲間達とはずいぶん仲良くなった。
今並んでいる帝都の入門手続きさえ終わればこの旅は終了となり、各自解散となる。
皆んな、俺との別れより塩胡椒が使えなくなる方が残念に思っていそうなのが解せない。
門を潜ると、まずは護衛だったゲルトとダカンがリフドンから依頼完了のサインをもらい、傭兵ギルドに報告の為に去っていく。
2人はしばらくは帝都で獣や魔物を売って生活するそうで、今日はこの旅で禁止していた酒を浴びるほど飲むと笑いながら去って行った。
続いてリフドンとミールともお別れだ。
ミールは、帝都にあるリフドンの店へそのまま向かうそうで、馬車から降りた。
リフドンは、この旅の収穫を依頼人に買い取ってもらったり、栄養剤を捌きに行くみたいだ。
この後の利益を想像すると、笑いが止まらないのだろうで、笑顔で去って行った。
残った俺はと言うと、リフドンに教えてもらった宿へと向かう。
とりあえず宿の確保をしておかないと、夕方以降にはいい宿は埋まってしまうのだそうだ。
「すいません。部屋に空きはありますでしょうか?」
「いらっしゃい!丁寧な言葉だね。うちの客は乱暴者も多いからあんたが満足できるか分からないが、それでも良ければ空いてるよ!」
「はい、大丈夫です。えっと、リフドンさんの紹介で」
この宿に行ったらリフドンは自分の名前を出せと言っていたので伝える。
「なんだい。リフドンの客かい。しかし…」
店員はジロジロとムツキを上から下まで見た。
「本当にいいのかい?うちは傭兵たちが利用する様な宿だよ。あんたみたいに身分の高そうな人の満足なサービスができるとは思わないが」
「いえ、私はしがない平民なので」
「しがない平民がそんな上等な生地の服を着てる訳ないだろうに。訳ありかい?
後で旦那のお古で良ければ平民に見える服を差し入れてあげるさね。
ほら、ここにサインだけおくんな」
恰幅のいい店員は笑顔で受付用紙を差し出した。
「平民に見せたけりゃ、今度からサインももっとヘニャヘニャにした方がいいね。で、何日泊まるんだい?」
俺はとりあえず1週間分の宿代を渡すと部屋へと案内された。
言葉遣いか。
友達と遊ぶ時間もあまり無いブラック企業で、リモートワークだったので、取引先との会議や上司との会議位しか人と話さない。
なので、人に向かって話す時には敬語で話してしまう癖はすぐには抜けそうに無いな。
とりあえず、長旅で疲れたので一眠りすることにする。
朝と晩御飯は宿で提供してもらえるらしいから夜まで休んでも問題ない。
行動は明日からにしよう。
そう思って、部屋に備え付けのベットに横になった。
勿論、日本にいたときの様な安価でもいいものでは無く、硬い木製のベットに布を敷いただけのものだが、旅の野宿よりは快適な睡眠ができそうだ。
うつらうつらと、眠りに落ちそうになった時、一瞬で目を覚ます様なコールが頭に響いた。
ピコン。ミールがサナル、カリンツ、トポ、エンナに販売を行いました。
スキル:料理、スキル:算術、スキル:穴掘り、スキル:かくれんぼを取得しました。
重複するスキルは統合されます。
…え?
ピコン。リフドンがシュナイゼル・エクリア、エリザベート・エクリア、ニコラス・ネイル、カイン、エルノア・トルバーニアに販売を行いました。
スキル:王の威圧、スキル:聖魔法、スキル:収納魔法、スキル:武器の才覚を取得しました。
………ええ!!!
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