第4話 出発
栄養剤を全て売り払って街の中心の広場へとやって来た。
雰囲気はザ・ファンタジーな感じの中世ヨーロッパ風なのだが、妙に整備されていて綺麗だ。
中央には噴水があり、そこも手入れが行き届いているのか水の溜まる場所にはゴミどころか落ち葉すら溜まっている様子もない。
俺はベンチへと腰を下ろしてさっき起こった事を考える。
栄養剤を店員のおっさんがお金を払った
どう言った理屈か分からないが、スキル:鑑定をゲットできてしまった。
それは嬉しい事なのだが、結局スキルがどうやって発動するのか要領を得ない。
分からない事はひとまず置いておいて、手に入れた銀貨5枚がどれくらいの価値かと言うのは分からないが、金銭を手に入れたのは良いとしよう。
鑑定を使ってみたが、MPを1消費で使えて、生き物への効果は無し。
物に対してのみ使える鑑定の様だ。
ちなみにMPは放って置いても回復した。
街のいろんな人に情報収集したが、この街は王都だからかどこで働くのも資格が必要で、他の町に行ってみてはどうかと勧められた。
なので、乗り合い馬車の停留所まで来たのだが、乗車賃は銀貨3枚。
なかなかに高く、財産の半分以上使ってしまう計算だ。
これからの事もあるが、この街にいても仕方がないので馬車に乗ってどこかへ移動することにする。
街の名前を見ても、当たり前だがどこがどこかさっぱり分からない。
唸っていると、背後から声がかけられた。
「どうした?小僧、そんな難しい顔して」
声を掛けて来たのはさっきの店の店員リフドンだった。
「あ、さっきの。いや、この街で仕事を難しいから何処かへ旅をしようかと思いまして。
行く当てもないので迷ってしまって」
「ならうちの馬車に乗るか?俺は隣の国でまた仕事を始めるつもりだ。この国はなんかきな臭い。最近兵士の数が増えたし…まぁ商人の勘だ。お前がうちの最後の客だった縁で銀貨5枚で連れてってやるよ。飯付きだ」
銀貨5枚は全財産だが、隣の国までは破格ではないだろうか?今見ていたのは隣町までで銀貨3枚だ。
「それ、全財産なんですけど…お願いします」
「なら、ついて来い!」
馬車のある場所まで歩いてついていく途中でリフドンは自己紹介してくれた。
そう言えば、スキルを覚えた時に知ったが本人に聞いたわけでは無かった。
でも、これで鑑定はこのリフドンから取得した物なんだろうな。
分からない事だらけだが、運良くリフドンと知り合えたおかげで馬車で移動することができる。
馬車はすぐ近くに停まっており、ここから俺が見えたから声をかけてくれたみたいだ。
馬車の周りには人が5人ほどいて、1人が店の従業員、2人が護衛の傭兵。残りは馬と馬車の管理人だったそうだ。
「すまねえが、コイツも連れてく事にした。
仲良くてやってくれ」
リフドンがそう言って俺の背中をとんと叩いた。
「兄ちゃん、よろしくな。俺達とパーティでも組むか?」
「やめなって。戦えそうにないだろ」
傭兵の2人が笑いながら挨拶をしてくれた。
軽く握手をする。
確かに、俺は武器も持ってないし、戦える様には見えないよな。
それに、ステータスオール2は相当低いみたいだし、この傭兵の人達はどの位のステータスなんだろう?
そんな疑問が湧いてくるが、鑑定は人に使えないし、いきなり聞くのも失礼なんだろうな。
傭兵の2人の名前はゲルトとダカン。従業員の名前はミール。
ミールが御者を務めるようだ。
俺はリフドンに言われるまま馬車に乗り込むと、馬車は街を出発するのだった
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