第5話 最後の持ち込み品

城下町を出発して半日ほど経ち、夕方頃、脇道にそれて野宿の準備をする事になった。

都合よく、町がある訳は無いので、これからは野宿の日も多くなる様だ。

それに、俺のせいと言うのもあるのだと思う。

初めての馬車の乗り心地の悪さに俺が酔ってしまい、進むスピードは遅くなってしまったのだ。


皆、優しく、文句も言わずに気を遣ってくれている。

ゲルトが、「これが乗り合い馬車なら白い目で見られるし、護衛が冒険者なら文句の一つも出るだろうが、ここはそんな事をにする奴はいねえよ」と笑っていたのでリフドンに拾ってもらって助かった様だ。

実際、乗り合い馬車を遅延させる人がいると、酷い場合、そこでほうり出される場合もあるそうだ。

遅れて夜になって魔物に襲われて全滅するくらいなら1人を捨てて行くと言う事らしいが、世知辛い。

そうなる事がわかっている奴は高い金出して護衛を雇えと言う事なのだろう。



俺がグロッキーに休んでいる間に野宿の準備は終わっており、ミール君が晩御飯のスープを作ってくれていた。


素材の味が生きている優しい味のスープにとてつもなく歯ごたえのいいパンが晩御飯だ。

日本で生きて来た俺には味が感じられなかったが、寒い体を温めてくれる。

味を解決する方法も、コンビニのビニール袋の中の最後の一つができるのだが、それは許可がないと犯罪になりかねないと言う可能性がある為、今は使わないでおこうと思う。


ご飯を食べている時、リフドンが話しかけて来た。


「小僧、お前がうちにおろしてくれた商品は珍しくて価値のあるものだった。

着ている服にしても、この辺では見かけない珍しいものだ。

勘違いするな。別に俺は移民差別しようって話じゃ無い。

俺が気になるのは商売人としてお前の袋の中にまだ珍しい物があるんじゃ無いかって事だ。

だから、困ってるお前を馬車に乗せた」


そう言ってリフドンはパンをがしりと咥えて噛みちぎった。


「なに、別に隠しててもいい。後で疑心暗鬼になっていらん所で疑われるよりは最初に言っておいたほうがいい。

街中で言えば聞いてるやつに狙われるかもしれないがコイツらは安心できると俺は思っている。だから言っただけた」


リフドンはその後で少しスープを口に含みパンをふやかした。

栄養剤がどれ程の価値を出したのか分からないが、ここで隠して変にもっと価値のある物だと思われても気まずいので、俺は、丁度家で使っていた物が無くなってコンビニで買った最後の商品を紹介する事にした。

しかし、その前に聞いておきたい事がある。


「リフドンさん、一つ聞きたいんですが、塩と胡椒の価値ってどれくらいですか?それと、取引に特別な許可は必要ですか?」


「あ、な、まさか、お前が持ってるものって…

まあ、高級品だ。塩はともかく、胡椒は超高級品な上で販売には資格が必要だが、安心しろ。個人で使うのは罪にならねえ。

けどな、いらんこと考える奴がいるかもしれん。用心しろ」


リフドンの言葉に俺はゆっくりと頷いた。


「ところでよ、銀貨1枚でこの旅の間、飯に一振りさせてくれないか?」


静まり返った雰囲気の中で、リフドンのその言葉は笑いを誘った。


「クク、良いですよ」


そうして俺がビーニル袋から取り出したのは味塩コショウ

手軽に使える一人暮らしの強い味方。


容器や、挽が無い事にも驚かれたが、一振りさしたスープの美味しさに銀貨1枚では安すぎたかと言われてしまったが、そこはお礼も込めてと申し出た。

実際は、価値がわからないからだが、それはいいだろう。


ゲルト、ダカン、ミールにも、銀貨一枚で、この旅の間の一食一振りの権利を売った。

この旅の馬車代は殆ど元が取れたのであった。



ピコン、スキル:マルチの効果により、ゲルトのスキル:剣術、ダカンのスキル:稲刈り、ミールのスキル:算術を取得しました。




…え?

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