バイオテクノロジー・笹・自由の女神
「バイオテクノロジー? それがどうしてこんなちっぽけな商店街に関係するって言うんだよ」
胡散臭いのは分かる。俺も最初はそうだった。バイオテクノロジーがうんたらかんたらなんて話、眉唾物でしかない。そう思っていた。
「でも、すごいんだよ。その技術を使えば商店街の一割の電力をまかなえるって言うんだ。実際目にしてみたけれどすごいもんさ。なにもしなくていいのさ。放っておくだけで電力が発生する画期的なテクノロジーなんだよっ」
さらに胡散臭さが増したと思っているのだろう。顔がもうめちゃくちゃだ。ヤバいやつ認定もされたっぽい。追い払わないでいてくれるだけまだましなのかもしれない。
「はぁ。んで、その画期的なテクノロジーには何が必要なんだい? この商店街には用意も出来そうもない膨大な金か? それともそれと未来への投資か?」
おっと。もうこれは限界に近そうだ。いつ話を切り上げられてもおかしくない。であればこちらも手札のカードを切っていくしかない。
「笹だけでいいんだ。まあ確かに大量に必要だけどな」
「笹?」
よしよし。ちょっとだけだけれど目の奥に興味の二文字が浮かんでいる。
「そう笹。商店街全体で一日の量がパンダ一頭分の食費と同じ量ですむんだよ」
「ん……それは安いのか?」
「安いだろうよ。商店街全体だぜ。商店街でパンダを飼うのと同じだ」
そうなのか。と真剣に悩み始めた。そうなれば、もうこちらのペースだ。
「と言うわけで先方にはそう話を進めて貰ってるから。あとの面倒な手続き等はよろしくな。アデュ」
預かっておいた資料を無理やり押し付けると、それ以上の話を聞くつもりはないと走り始める。
目指すはニューヨーク! まってろ自由の女神様。こんなちんけな商店街さっさとおさらばしてやる。
そう受け取った報酬を手に。商店街を駆け抜ける。
けれど。空港であっさりと掴まって商店街へ連れ戻されるのだ。「なあ。パンダってお前さんの一日分の働きより食うらしいじゃないか。そんなの面倒見切れる訳ないよなぁ?」と。
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