第31話「二人の再会」
「楽しそうに見えるか?」
「憎まれ口叩くくらいの余裕はあるように見えるかな」
「そりゃどうも……」
まさか実の妹にこんなことを言われるときが来るとはね。
「ねえ
「ごめんねお兄ちゃん、ちょっと”お話”してくるから、それまでに人前に出られる格好になっててね」
なにか言いかけていた
「気を使ってもらったのかな?」
「ほんとに痛いところとかない?」
「大丈夫そうだよ、ありがとう茜」
適当に手足を動かしてみるが、長時間同じ姿勢だったことによる痛み以外は感じなかった。
さっきので折れたり、傷めたりしてないようでよかった。
「よかった……、服も破れて無さそうだね」
中途半端に脱がされていた服をまた着ると、茜はまるでアパレル店員の様に全身くまなくチェックし始めた。
「今朝はごめん……、多分酔ってひどいこと言った」
「うーん逃げた時に飲んだのがあの人に関係するお酒だったのはちょっと嫌だけど、それくらいストレスだったってことだよね。ごめんね気が付かなくて」
「達也は頑張ったよ」と言いながら頭を撫でてくる。
「いや俺も事前に言っておけばよかった……」
「陽菜さんにも言ったけど、何も言われないほうが不安になるかな。私ってそんな
まあ冷静になって考えると、俺だってあからさまになにか隠されているとわかったら、いい気はしない。
「ところでなんでこの場所が分かったんだ? てかここってどこ?」
前来たときはこんな打ちっぱなしの部屋なんかあいつの家になかったはずだ。
「ああここはあの人の家の中だよ? なんか陽菜さんがSNSに上がってた写真から特定したって言ってた。いるかどうかは賭けだったけど勝てたみたいで良かった」
「ああアカウント特定したとか言ってたけど、そこから家までわかるのか……。末恐ろしいな」
「ところで、さ」
さっきの安堵が混ざった声から一転、すごい不安そうな声を出してきた。
「なに?」
「あの人とどこまでやったの?」
まあ服を脱がされてたらその心配もするか……。
出て行った時のあいつの服装も必要以上に薄着だったしな。
「キスまでだよ、普通の」
「ほんとに?」
完全に信じられないのか、ジッと俺の目を見つめてくる。
「ああほんとだよ」
俺が覚えている範囲ではあのキスした以外記憶がなかった。
「わかった」
それだけ言うと、一瞬覚悟を決めたような顔をすると唇を重ねてきた。
ただ唇同士を合わせるだけだったが、茜とのそれは全身を優しく包まれたような安心感があった。
「これできれいになったね」
「不安にさせてごめん」
「大丈夫だよ不安になったのはあの人のせいだし、達也は私たちの関係とか知らなかったからしょうがないよね……」
まあ確かに知らなかったとは言えるけど……。
もう少しにあいつを気を付けて見ていたらこんなことは防げたかもしれない。
それに振られても平静を保てる強さがあれば。
「前振ったときはごめんね。通話に出たのがあの人だったからもう私は要らないのかなって思ったら連絡できなくなっちゃった……」
「話せるようになったら茜の口からも何があったのか教えてほしい」
「わかった……。もうちょっと待っててほしいな」
それだけ言うと、「じゃあ陽菜さん呼んでくるから待っててね」と駆け足で行ってしまった。
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