第19話 高校デビュー
「フランセットさんと同じクラスだといいなぁ…」
(虎千代の中では)初めて出来た友だちである留学生、フランセットと同じクラスになることを望んでいたが、
「徒手部門無専科、通称一年ず組だ。」
教官、玄武剛健に導かれた教室。いろは唄の末語たる『ず』を冠するこの専科。
因みに、他の専科は専科名で呼ばれるし、〇〇組と呼ばれることは無い。
「お前ら、もう一人のクラスメイト…入学早々遅刻してきた大物だ。」
教室の扉を開き、剛健は地の底から響く様な低音でそう言うと、
「うるせぇ!!ぶっ殺すぞ!!」
世紀末を思わせる男子生徒たちが、担任である剛健と虎千代に襲い掛かる。
「…ふん。お前らなど口だけのチンピラだ。」
瞬く間にモヒカンたちを制圧する剛健。
「フランセットさん…」
カオスな状況なのに一切動じる様子もなく、(たぶん)友だちの姿が見えず、意気消沈する虎千代。
襲い来るモヒカンたちから数十発の凶器攻撃を受けながら、ノーダメージで嘆く姿に、剛健は益々警戒を強めた。
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「…っくしゅん!」
「あら?風邪かしら?フランセットさん。」
剣術部門細剣専科、男女比率で女子が大多数を占めるこの専科。
絶賛身体測定中の細剣専科の女子生徒たちの中、くしゃみをしたフランセット。
「いえ…そんなことは…」
しかし、確かな悪寒が、フランセットの背筋に奔る。
「経津主虎千代…」
誰にも聞こえぬ声で、フランセットは呟いた。
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「入学おめでとう、ず組のクズ共!!貴様らの担任となった玄武剛健だ!!」
既に力の差を思い知らされた者たちは、反抗的な目を向けながらも、大人しく席で担任の言葉を聞いている。
「何故ここが『ず』という、いろは唄で最後の言葉なのか?お前らクズ共にとって、最後の救済の場だからだ!!」
徒手部門無専科が、『ず組』と呼ばれる所以を語る剛健。
しかし、生徒たちの反応は違う。
「おい、いろは唄ってなんだ?」
「知るかバカ野郎。」
「誰がバカだこの野郎!!」
と、すぐに喧嘩が勃発していた。
「すまん、バカに言葉で説明しようとした俺が間違いだったな。」
喧嘩を力で仲裁という名の制圧を行い、剛健はそう言った。
「要するに、貴様らを鍛え直す。そういう場だ。文句がある奴は…」
ギロッ!と剛健の鋭い眼光が教室内を見回す。
誰もその眼光に逆らうことは出来なかった。
しかし、それ以上の脅威が『ず組』を襲う。
「私に言え。身体に叩き込んでやろう。」
理事長こと、経津主寅華。入学式で嫌という程の力の差を知らしめた怪物が、教卓に腰掛け、ニヤリと笑った。
突然現れた理事長。
彼女の接近に誰も気付けなかった。
その時点で、格の違いを総員が察していた。
「弱い…お前も弱い…」
怯えながら席で震える生徒たちを一人一人指差しながら、ゆっくりと寅華は教室内を歩く。
「弱い…」
弱いと呟きながら歩く寅華の足が、一人の生徒の前で止まる。
「情けない。」
虎千代の前で止まった寅華は、彼の額にデコピンを放つ。
ゴシャァッ!!という、人体から発せられる筈のない音と共に、虎千代の身体が吹っ飛ぶ。
吹き飛んだ虎千代の身体が、轟音を響かせながら壁をぶち破っていく姿を溜息を吐いて見送った後、
「好きに振る舞うのは構わんが、校則違反は私が処罰する。遅刻なら半殺しで勘弁してやる。」
そう言って教室内を去る理事長に、この世の終わりの如き絶望を皆が感じていた。
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「酷い…帰ってからも半殺しにされるのに、学校でも一発ダメージを入れるなんて…」
瓦礫と化した壁の中から、無傷の虎千代が出て来る。
その姿に、皆は新たな脅威を見つけた様な目を向ける。
あれ程の、コンクリートを突き破れる勢いで吹っ飛んだのだ。常人なら死んでるし、辛うじて命があったとしても、再起不能になっている。
しかし、虎千代は無傷だったし、なんなら日常茶飯事の様な感じで自分の席に着いた。
ヤバい奴と同じクラスになった。
新生活開始早々、虎千代は警戒の対象になっていた。
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