ステージ2 チュートリアル
(終わった……完全にやっちまった……)
使い魔を選んで1秒後。俺は速攻で後悔していた。
『わたしを選んでくれてありがとう。頑張ろうね、キミ』
鈴付きのピンクの首輪をつけた黒猫がふわふわと宙を飛びながら俺に話しかけてきた。普通に話せるのか。何でもありだなゲームの世界。
「ん、あぁ……」
俺はつい気のない返事をしてしまう。
『そうそう、わたしは使い魔のネコだから、〈マコちゃん〉って呼んでくれたらいいよ』
「マコちゃん? それがキミの名前?」
『うんっ』
「……あぁ、わかった。よろしく頼むぜ。マコちゃん」
俺が言うと、マコちゃんはにっこりとほほ笑んでくれた。
過去の選択を嘆いても仕方がない。もう賽は投げられた。それに、もしかしたらマコちゃんには凄い能力があったりするかもしれないし。
『よしよし、無事に使い魔も決められたようだの。おっと、その子は――』
ラプラスは何かを言いかけたようだが途中で口をつぐんだ。
「あぁ、俺たちはいつでもスタートできるぜ」
『そうか、ではステージ1に移動してそこで
ラプラスが言うと俺たちはまた【バヒュン】と言う音と共に部屋を転送させられた。
俺の目の前には、見渡す限りの荒野が広がっていた。遠くには切り立った岩崖も見える。
『ステージ1。スタートぉ』
「ちょっ、いきなりかよ。どうすればステージクリアとかも聞いてないんだけど」
『あぁそうだったな。忘れていた』
「忘れんなよ。職務放棄か」
『いーや、バイトだけどちゃんとやるぞ。このゲームはの、ステージごとにボスがいるから、それを倒せばステージクリアとなる。で、ファイナルステージでラスボスを倒せばゲームクリア』
「雑過ぎんだろ! もっとちゃんと説明しろよバイト!」
『ったく、めんどくさい子だのぉ。では、逆に質問があったら答えてやろう』
「そしたら、武器とか防具はどうすればいい?」
『その辺に宝箱が落ちてるからそれを拾えばいい』
「……敵を倒せばドロップアイテムとか経験値がもらえてレベルが上がる感じのヤツ?」
『うむ、いわゆる〈アクションRPG〉だな』
「ステージクリアに制限時間は?」
『基本設けてはいないが、ステージによって条件が変わるから、全部とは言えないの』
「……わかった。とりあえず行ってみる」
俺はマコちゃんと視線を合わせる。次に確認しておきたいのはもちろん使い魔の能力だ。
「マコちゃん。キミの能力を教えて欲しいんだけど」
『わたし? わたしはただの猫だから能力なんてないよ。使い魔になったのもつい最近だし』
「はぁ? ウソでしょ……」
『でも大丈夫。キミのことはわたしが守るから。だから一緒に頑張ろ、ね』
「……」
終わった……。これはもう自力でレベルを上げてステージをクリアしていくしかない。待ってろよミサ。もう一度会えたら、今度こそ俺の気持ちを伝えるから。
『ねぇキミー! 向こうから敵が来るよー!』
「ちょ……」
視界にはこちらに数頭で向かってくる牛型のモンスター。めっちゃでかい。体重1トンくらいありそうだ。
「逃げるぞマコちゃん! まずは装備を探さないと」
『そうだね、逃げよー』
俺たちは全力で逃げ出した。てか、再序盤から逃げなくちゃいけないとか、マジで炎上レベルのクソゲーだな。
息を切らし、何とかモンスターを振り切って膝に手をついて呼吸を整える。早くも汗だくの俺を横目にマコちゃんが言う。
『ねぇキミ。この近くに宝箱がありそうだよ』
「え? マコちゃん、なんでそんなことがわかるの? ひょっとしてそれがキミの能力なんじゃない?」
『んー、違うと思うけどなぁ。ただの猫の能力だよ、きっと』
マコちゃんはそう言って『にゃはっ』と笑った。
表情豊かな猫だ。ぶっちゃけ可愛い。
マコちゃんに言われた通りの場所には確かに宝箱があった。特に鍵などはかかっていない。マジで雑な作りだな、このゲーム。
バカッと開くと、そこには装備一式と説明書が入っていた。
「えっと、なになに」
【おめでとう! この装備はまぁまぁそれなりに微妙に当たり? だよ。F~Sランクの中でCランクの装備一式だから使ってね。そして、使い魔にはアビリティと専用武器をプレゼントだー。今の段階ではそれなりに強い方だし、リセマラするには微妙なラインかもね】
……何か色々運営雑過ぎんだろ。だからバイトも雑なんだろうな。
『Cランクの装備だって。よかったねキミ。わたしも専用武器なんて嬉しいなぁ』
「……そうだな。確かに装備があれば戦えるし、マコちゃんのアビリティってのも――」
『えーっと、アビリティは〈
(なんか人間みたいな物言いだな。……戦闘に勝てる気は全くしないけど、マコちゃんは
その時、天からラプラスの声が聞こえてきた。
『言い忘れていたが、このゲームは〈
……前言撤回。
やっぱり
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