後処理編
第31話 帰路
日本国、東京都大田区
羽田国際空港第3ターミナル付近の滑走路
2025年3月某日 午前11時55分頃
グレイと小島はタウレッド王国政府のチャーター便に座っていた。
機体は離陸体制に入ったため、日本政府にはもう呼び止められることはない。
羽田空港内のワトソン重工の臨時ヘリポートで下りた後、急いでスーツに着替えてから僅か20分で全部完了し、その間残りの隊員が合流した。
2人はタウレッド政府発行の外交旅券を所持していたので出国は非常にスムーズに進んだ。
「日本とはしばらくの間さらばだ。」
とグレイ。
「国外退去処分(ペルソナ・ノン・グラータ)に指定されたらアウトですが、グレイ監査官。」
と小島。
「心配無用だ、小島。たとえあの田森一派が粛清されたとしても、日本国内には協力者いくらでもいる。」
「支社に突入する前には田森一派が粛清されたと報告を受けた。」
小島が伝えた。
「用済みだったので別に気にしなくていい。」
グレイが返事した。
「新たな協力者の目星が付いたでしょうか?」
と小島。
「はい、既に我々のために働いている。どの道にしても日本とタウレッド王国は古くから国交している上、タウレッド王国の経済を受け持つワトソン重工も日本の国家事業に参加している。」
ワトソン重工日本支社ビルの戦いで生き残った牙(ファング)小隊(プラトーン)16名の隊員、警視庁に侵入した2名と連れて来られた隊員候補生も機内で休んでいた。
チャーター機は離陸し、日本からゆっくりと離れていた。
離陸完了の知らせが流れた後、小島は席を立ち、ワトソン重工技術部が機内に作った特別医務治療室に行き、植田緑元分析官を見に行った。
彼女は酷い怪我していたが、救出した隊員が応急処置を施していた。
治療用ベットに休んでいた植田に小島が声をかけた。
「どうですか?聞こえますか、植田さん?」
植田はゆっくりと目が明けた。黒い髪の毛は白髪になっており、体は酷い悪臭が放っていた。
「はい。聞こえます、小島さん。」
弱々しく答えた。
「喰種(グール)相手よく頑張ったと聞いたよ。」
「はい。」
「怪我が酷いようですが、安心してね、これから恩恵を授けます。」
小島の口が裂けた後、触手(テンタクル)牙(ファング)を1本出した。植田の首に当て、血を飲み始めた。血が吸われるとともに先端の牙から小島の血が少し植田に注入された。
彼女は色白肌の肌から蝋人形のような嘘っぽい色の肌に変更し、白髪となった髪の毛が黒くなった、前髪の一部を除いて。体の怪我も治り、傷は塞がった。
植田は小島を驚いた目で見た。
「私、転化した?」
と植田が聞いた。
「はい、植田さん、あなたはもう転化人(インヒューマン)の一員になったよ。」
彼女の虚ろな目から大粒の涙が流れた。植田緑は子供のような泣き声で転化したことを喜んだ。
「私は強くなれる?」
「もちろんです。あなたはワトソン重工エリート戦闘部隊の隊員になる。」
「私は戦闘経験ありませんですよ。」
「喰種(グール)と戦い、生き残る一般人は中々いないですよ。あなたは十分強い。」
「ならばもっと強くなりたい、信長や森、そしてあの女に仕返ししたい。」
「私が鍛えますので安心してね、植田さん。」
「緑と呼んでください、小島隊長。」
「転化したばかりなので少し血を飲んだ方がいい。」
と小島が輸血用袋を植田に渡した。
彼女は2本の触手(テンタクル)牙(ファング)を出した後、貪るように血を飲んだ。更に肌の蝋人形感が強まった。
小島は血を貪るように飲む植田を舐めるように見ていた。小さな体なのに驚くほど大きく、丸く、肉付きのいいヒップ、少し太いウエストと豊満なバスト。ボブヘアと大きな目、鼻は少し低かったが、色気たっぷりのプルプル感の唇。植田は見られていることに気づいて、微笑んだ。
輸血用の大きな血袋3つを飲み終えた後、小島の顔をじっと見ながら、服を脱ぎ始めた。
小島も服を脱ぎ、3本の触手(テンタクル)牙(ファング)を出し、植田の首、胸と腹に刺した。
彼女が出した2本の触手(テンタクル)牙(ファング)が小島の首と胸を刺した。
お互いの血を吸うと吸われながら、治療室のベットでセックスした。
チャーター機は日本の領域から出たとパイロットよりアナウンスがあった。
小島は治療室を出て、機内に設置された会議室に入った。そこには既にグレイが椅子に座っていた。
「新しい隊員の様子は?」
とクレイは聞いてきた。
「回復している。戦力になると思うよ。転化前に出来損ない種2体をさばいたようです。」
「頼もしい新人さんだね。で楽しんだか?」
「ご想像の通りです。」
と笑顔で小島が答えた。
小島が席に座り、グレイは大きなモニターを付けた。
モニター画面に映ったのは大きな円卓の周りに座っている8名の男性だった。
「ご苦労であった、皆さん。」
僅かなフランス語訛りの30代前半の男性が声をかけた。
「ありがとうございます、会長。」
とグレイ。
「ありがとうございます、我が主(マスター)。」
小島が返事した。
「では報告を聞こうか。」
と軍人っぽい背の高い男性が聞いてきた。
「ジェイ・ヘイミッシュ・ワトソン博士、【物】は回収済み、治療タンクの中にいる。薬で今強制的に意識を失っている。【物】には自我がまだ残っているので本社に着いたら措置できると思います。」
と小島が報告。
「これからジョン・ワトソン博士と呼べ、小島。【物】を届けてくれたらこちらでジキル博士、グリフィン博士と私で対応する。」
とジョン・ワトソン博士が答えた。
「失礼しました、ジョン・ワトソン博士。」
と小島が返事した。
「ジキルが必要か?」
と背の低いゴリラのような若い男性が聞いてきた。
「必要ですよ、ミスター・ハイド。」
と30代後半で傲慢な顔をしたグリフィン博士が答えた。
「人員損失は?」
とひげを生やした40代前半な外見をした筋肉質な男性が質問した。
「モラン大佐、今回は牙ファング小隊プラトーンの隊員14名、そのうちの1名は裏切りです。使い捨ての転化人(インヒューマン)一般戦闘員220人、「物」の元護衛2名、餌用250名の人間(ウォーム)戦闘員及び作業員と105名の失敗作実験体。あの使えない自称我々の主(マスター)を除外して。」
と小島は淡々と報告した。
「わが社の経済的損失はとっても大きいね。」
と貴族風な外見をした40代男性が話した。
「そうですね、日本の支社ビルもかなりの被害を受けている。」
と場違いな派手なスーツを着た40代後半の男性が同意した。
「サンジェルマン伯爵、カリオストロ先生、この損失は必要不可欠だったのですべては想定内です。ご安心を。」
と仏頂面の40代太目の紳士が2人をけん制した。
「流石用意がいいね、マイクロフト管理官。」
と会長は声をかけた。
「織田信長とノスフェラトゥが邪魔なので早めに滅ぼした方がいいかも知れない。」
とグレイは提案した。
「安心してね、既に計画を用意してある。」
と嬉しそうに会長が答えた。
「呼ばれてきました。」
と50代前半の男性がミスター・ハイドの座っていた席から声をかけた。
「ジキル博士、良かった、良かった。【物】が着いたら大変な作業が待っている。」
と会長。
「喜んで対応します。」
とジキル博士が嬉しそうに答えた。
「では、今回は以上です。皆さまの帰りを本社で待っているよ。」
と会長と呼ばれている若い男性が話した後、モニター画面を切った。
遡って
ワトソン重工の日本支社ビル入り口ホール。
11時42分頃
信長が全部を焼き尽くした後、生き残った48名のワトソン重工の転化人(インヒューマン)一般戦闘員の処遇を考えなければならない。
「どうしますか、お館様?」
と森成利が信長に聞いた。
「一旦、警視庁に連れて、地下監獄に入れる。それから考える。」
と信長。
「承知致しました、信長様。」
と森が答えた。
話終わったところで隠し扉から弱っている弥生が出てきた。
「我が主(マスター)、申し訳ございません。」
と弥生が弱々しく話した。
「我が姪よ!何てこと!今すぐ輸血用血袋を持ってこい!」
信長が命令した。
新一とヘルムートは弥生のいるところへ行き、彼女を支えた。
「不覚でした、申し訳ない。」
弥生は謝罪した。
「気にするな、弥生。」
と新一は優しく声をかけた。
「血袋、早く!」とヘルムートが叫んだ。
ゼンフィラは2つの血袋を持って、弥生のところへ駆け込んだ。
「はい、どうぞ。飲んでください。」
とゼンフィラ。
「ありがとう。」
弥生が答えた。
弥生は牙を出して、袋を噛んだ後、血を吸い始めた。
彼女の体の燃えだしたところと刺されたところが再生し始め、顔色が戻った。
信長が彼女のところへ行き、優しく抱きしめた。
「大儀であった、早く元気になれ、我が姪。」
「申し訳ございません、伯父上どの。」
と弥生。
「気にするな。少し休んで、弥生よ。」
その時だった、48名のワトソン重工の転化人(インヒューマン)の一般戦闘員の頭が爆発し、全員が灰となった。
時は同じく、出国前の小島はスマートフォンのアプリの画面を開いて詳細を見た。
【消去装置が体外に排出されたため、1名選択不可。48名選択可能。】
とアプリ画面。
【48名一斉に選択しますか?】
アプリの画面をタップして、小島は48名を選択した。
【48名消去しますか?YES・NO】
何の迷いもなく小島はYESをタップした。
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