Case.1 祟り
独白
地元を離れてしばらく経つが、私の地元には天満宮がある。
天満宮を知っているだろうか。
しかし、道真公が悲運の人物であることは、実はあまり知られてはいないのではないだろうか。分不相応な地位に就いたと周囲にやっかまれた彼は太宰府に左遷され、事実上の流刑という憂き目に遭った。道真公は都に戻ることなく失意の内に亡くなるのだが、彼の死後、都で次々と怪現象が起こるようになる。
疫病の流行に飢饉――そして、極めつけは清涼殿への落雷だろう。この落雷により、道真公の左遷に関わった何人もの人間が亡くなった。当時の人々は、これを「道真の祟り」だと噂した。実際に、彼が亡くなってから何年も経っているにも関わらず、だ。それほど道真公は強大な怨みを呑んで亡くなったのだ、と当時は信じられていたのだろう。
……少し、現実逃避してしまった。私は現実とは思えない光景を目の当たりに、これは道真公の――天神様の祟りだ、とふと考えてしまったのだ。怨まれても祟られても仕方ないことを、この男は散々してきたのだから。
だから、これは当然の報い。誰も悪くない。悪いのは目の前で息絶えたこの男だけ。雷とは神の怒り――すなわち天罰。罰が当たった、ただそれだけのことだと、必死に自分に言い聞かせた。
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