そのままでいて 〜愛〜

 何がいけなかったのだろう。

私はあの子に、大きな大きな愛情を注いできたつもりだった。あの子は何不自由なく、母親の愛に飢えることもなく、幸せに生きるはずだった。それが、どうしてこんなことに。一体何が足りなかったというのだろう。


 目の前のベッドに娘が寝ている。今朝一人暮らしのアパートで首を吊ったらしい娘。

机には遺書があって、その中に、お母さん役立たずでごめんなさいという文章があったそうだ。

娘は今の所死んでない。酸素マスクをつけられて意識を失っている状態だ。

私はこの子の、昔からの癖っ毛や丸い輪郭を見下ろしている。

幼い頃から変わらない部分。昔から愛おしくて仕方がなかった。

一体、何がダメだったの。

どうしてあんなことしたの。


問いたい娘の瞳は固く閉じられていて、私を拒絶しているように見える。

私がこの子に、死ぬほどの苦しみを背負わせてしまった。

ただ、ただ申し訳なくて、いっそのこと、この子の手で罪を償わせてほしいと思う。


彼女の胸の奥の小さな子供にそっと手を伸ばす。

その涙を拭って抱きしめる。あまりにも小さくて怖くなる。守りたいと思う。


私は涙をゴシゴシと拭った。



娘がゆっくりと両目を開け始める。




「はな」

あの日つけた名前を呼ぶ。



「愛してるよ」

生まれてきてくれて、

生きていてくれてありがとう。



私は、生き返ったはなをぎゅっと抱きしめる。

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